三菱日立パワーシステムズ(MHPS)株式会社の社員がタイの発電所建設に際し、現地の公務員に現金を渡した容疑があり、捜査がされています。

この件について東京地検特捜部が会社側と司法取引をしたという報道がなされています。

容疑は贈賄ですが、具体的に問題となるのは海外での事件のため刑法ではなく不正競争防止法です。
罪名は外国公務員贈賄罪とか外国公務員不正利益供与罪といいます。

刑法でも海外での犯行についても日本法が適用される犯罪がありますが、今回は外国の公務員のため贈賄については刑法自体の適用はないのです。

不正競争防止法は贈賄した個人だけでなく法人も罰する規定となっています。
これを両罰規定といいます。

今回、日本版の司法取引として初めて、会社が捜査に協力する代わりに法人としての起訴は免れるという司法取引をしたと報道されています。

ただ、この手の事件では個人が贈賄したいということは少ないのではないでしょうか。
自分の会社での成績や評価のために贈賄してでも実績を上げたいということはあり得るかもしれませんが、6000万円以上のお金を個人が動かせるのかは疑問です。
会社が捜査に協力した結果、組織的な犯行だったとしても会社は責任を免れてしまうというのでは何のための捜査かわからなくなってしまいます。

ただ、今回は東京地検特捜部が動いているので司法取引しないと解明しにくい部分があったのかもしれませし、犯罪による収益は没収の対象となりますので、発電所の対価ですから立件しにくい事情があったのかもしれません。

不正競争防止法の贈賄についての罰金の上限は3億円ですから、仮に3億円の罰金を免れたとしても司法取引第1号の不名誉の対価は3億円では済まないかもしれません。