大阪の羽曳野市で不動産会社社長が農地を不正転用したとして起訴されました。

問題なのは市の職員らがこの社長から400万円ほどの贈答品を受けていたことが捜査の過程でわかったことです。

この件の反省から羽曳野市が利害関係人から贈答品を受けることを禁じる倫理条例の制定を検討しているという報道がなされました。

これを見て私は条例?と引っかかるものがありました。

なぜかというと利害関係人から物をもらって便宜を図れば贈収賄になるのでは?と思ったからです。

実際に徳島県で起きた太陽光発電の土地を巡る似たような事件では農業委員にお金が渡っていたため贈収賄罪で逮捕者が出ています。

今回大阪の事件では農業委員と事務局職員が農地法違反の幇助の容疑で送検されました。

ここから条例の制定につなげるのは飛躍があるので問題点をいくつか検討してみたいと思います。

まずこの件も贈収賄の可能性はあったと思います。

職員らが贈答品を受け取っていたことがわかったのは捜査の過程で押収した資料の中から贈答品を配布したリストが見つかったからです。

既に農地法違反の幇助の方で手続きが進んでいたためか、授受されたタイミングの問題で贈答品と農地転用への便宜との間の因果関係がわかりにくいからなのかはわかりませんが、贈収賄では立件されませんでした。

そのため贈収賄で立件できない事案については条例の制定で防ごうとしている可能性があります。

もう一つの問題点は農地転用の実務を行うのが農業委員会であることです。

農業委員会は市長が任命する非常勤の公務員です。

農業委員会の事務局には市の職員が出向しています。

しかし市そのものが手続きを行う主体ではないため贈答品の贈り先によっては贈収賄で立件が難しいケースがあるため条例の制定を検討している可能性もあります。

今回のケースでは農業委員も事務局職員も贈答品を受け取っていたようですので農業委員会の職員であるため贈収賄にしにくかったという事情はあまりないように思います。

なぜなら準公務員についても犯罪が成立する場合もありますし、公務員の立場を離れても事後収賄罪のような犯罪類型によって処罰されることもあるため農業委員会と市が一応別組織だからということが原因の一つなのかは確認してみたいところです。

犯罪が成立しなくても市民の信頼を得られなくなるので倫理条例を制定するということなのかもしれませんがもう少し理屈を聞いてみたい気がします。