最近このブログで「非正規従業員への退職金・賞与不支給についての最高裁判決」という記事を書きました。

別の事件ではありますが最高裁判所で関連する判決が出たので書きます。

この事案では日本郵便の契約社員に正社員には認められている手当や休暇が付与されていなかったことが争われました。

日本郵便は契約社員の数も多いですから複数の原告が3つの地方裁判所で訴訟を提起し、控訴審としての高等裁判所では結論が分かれていました。

今回最高裁判所は契約社員について手当や休暇を付与しないことは不合理な差別にあたるとして第一審の原告側を勝訴させました。

判例の詳細な評釈は学者の先生に任せるとしても考え方としては大きく2つに分けられると思います。

一つは手当や休暇はプラスアルファなので正社員と異なっても良いという考え方です。
もう一つは手当や休暇が労働者としての生活保障としての側面があるため契約社員であっても認められるべきという考え方です。

今回最高裁判所は後者の立場に立って判断したのではないかと思います。

労働者の根幹に関わる待遇なので格差を認めないという判断です。

言いにくい理由としては一回の支給額が退職金や賞与に比べて高額にはなりにくいという経営面に対する影響も考慮されているのではないかと思います。

少し前に出た最高裁の判決では非正規社員に退職金や賞与を支給しないことは不合理とはいえないという判断がなされていました。

こちらは退職金や賞与といった待遇がプラスアルファと捉えられたのではないかと思います。

今回とは反対に退職金や賞与の支給額が高額になりがちなので経営に対する影響が大きいことから格差が不合理という判断はしにくかったのではないでしょうか。

今回の判決は最高裁判所の第1小法廷で出され、裁判長は刑法でおなじみの山口先生です。

刑法の学者に民事の裁判を判断させて大丈夫なのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、先生は若い頃に司法試験にも合格しているためもともと裁判官になっていてもおかしくない方です。

実際出された結論も妥当と言えるのではないでしょうか。