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白書でも白紙に返せない

防衛白書ができてから半世紀が経ちます。

刊行当時の防衛大臣は後に総理大臣となった故・中曽根康弘氏です。

日本を代表する政治家ですが元軍人でもあります。

防衛白書を作った理由は国民に防衛問題について議論してもらうためのきっかけを作りたかったようです。

確かに国の安全というものは自然に実現されるものではありません。

特に防衛問題についてアメリカ(U.S.A)軍の軍事力に依存している部分が大きい日本では、なおさら国民の考え方というものが国防の方向性を決めるだけでなく、防衛政策の実現にも影響してきます。

そのため防衛問題について国民レベルでの議論を深めたいという思いは実際にあったのだと思います。

当時、国防費はGNP(国民総生産)の1%以内というルールがあったにもかかわらず、これを破り、危険思想の持ち主のように批判された中曽根氏ですが、国民に対する防衛問題の提起の仕方としては、時代に耐えうる方向性を打ち出せていたのかもしれません。

ただし実際に家庭内で防衛白書を読んでいるという話はあまり聞きません。

社会問題の一部としてニュースに取り上げられるというのが実情ではないでしょうか。

今年その防衛白書の中に台湾の情勢の安定が重要だということが記載され、中国の反発を招いています。

中国側は台湾問題は中国の内政問題であり、外国の干渉は許さないという趣旨の発言をしています。

このところの尖閣諸島周辺海域への中国公船の侵入についても、中国の領土と領海での正当な活動だと主張しています。

元々日中両国の良好な関係のために両国間で棚上げにされていた尖閣の領土問題や平和のためにも防衛問題を考えてほしいという意図のもとに刊行された防衛白書が、現在紛争のきっかけになりかけていることは非常に残念です。

パワーポリティクスによる綱引きではなく、先人が示したような友好的な関係のための知恵というものを、これまでと違った形で再提示できるだけの能力がある両国だと思うのですが、そのような知恵が、かえって出にくくなってしまっているような気がします。

両国が経済力を持ってしまったために、衣食足りて礼節を知るというより、「もっと、もっと」という気持ちが出てきてしまっているのでしょうか。

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