JR東日本が駅構内で刑務所からの出所者や仮出所者を防犯カメラで検知するシステムを今年7月から運用していました。
いわゆる顔認証という方法です。
これを読売新聞が報道したことを受け、JR東日本は当面は運用を取りやめることを発表しました。
JR東日本は被害者等通知制度に基づき取得した個人情報や顔情報をシステムに登録することで検知できるようにしていました。
被害者等通知制度は被害者や参考人等に事件の処理状況や結果について通知することにより刑事司法の適正な運用を図ろうとする制度です。
JR東日本自身が被害者となることもあることを考えれば、個人情報を不正に取得しているわけではありません。
JR東の駅構内などで、JR東や乗客が被害者となるなどした重大犯罪を犯して服役した人を対象としおり、痴漢や窃盗などは対象外としています。
しかし有罪が確定した人だけでなく、指名手配犯やうろくなど不審な行動をとった人も対象としています。
このような有罪が確定していない人の情報までを登録するとなると問題が出てきます。
刑務所に服役していた事を考えても、出所後に監視されているのと同様の状態を作り出してしまうのは、JR東日本が公権力ではない私人であるとしても、人権侵害になりかねません。
防犯カメラで検知するのはJR東日本の管理権の及ぶ範囲なので、出所者について言えば制度目的から完全に外れるとは言いにくいところです。
電車の利用者が被害を受ける犯罪が起こっている現状からすれば何らかの対策をとろうとするのもうなずけます。
個人的には重大犯罪だけでなく窃盗や痴漢なども含めて警戒しなければならない気もしますが、一方で前科も含めて個人情報も保護されなければならなず、更には情報の問題だけでなく罪を償った人の更生を考えるうえでも、出所者の検知は時期尚早という気もします。
このような問題は仮に手段が直ちに違法と言えなくても、運用を始める前に、社会的なコンセンサスを形成しておくことが重要なのかもしれません。
まずは法律家が法解釈を示し、社会的な議論を深め、運用のあり方を整備する必要がある問題なのだと思います。