最近、学生支援機構が奨学金の残債務について保証人に全額請求し、返還を受けていた事案で、保証人側に不当利得の返還請求が認められた裁判の判決をご紹介しました。

保証人には分別の利益(ぶんべつのりえき)があることを書いた記事です。

それと直接関係があるわけではないのですが、政府は就学を支援するため、奨学金について新しい制度を検討していることを発表しました。

出世払い型の奨学金です。

通常、奨学金というと、全額、支給される、一部支給される、貸与されるというのが相場です。

これに加え、出世払い型では、在学中は授業料を免除し、卒業後の所得に応じて返還できるのが特徴です。

制度の詳細はこれから検討されますが、「出世払い」という用語をそのまま用いるとすれば、法的な意味も決まってきます。

法律の世界では、法律効果の発生を到来することが決まった事実にかからせるものを「期限」といいます。

法律効果の発生を将来発生することが不確実な事実の成否にかからせるものを「条件」といいます。

出世払いが、「期限」だとすれば、出世しないことが決まったら、それが決まった時に期限が到来したと考えます。

つまり奨学金を返さなくてはなりません。

出世払いが「条件」だとすると、出世しないことが決まったら、条件が不成就ということになり、返さなくて良いということになります。

条件と考える方が得な気がしますが、これについては判例があって、出世払いは不確定期限であると解されています。

つまり最終的には払わなければなりません。

しかし、今回検討されている出生払い型奨学金は、所得額に応じてという内容なので、全額は返還しなくて良いケースも出てくるかもしれません。