造船会社に勤めていた元労働者やその遺族が、アスベストの被害を受けたとして、国に9700万円の損害賠償を求めた裁判が、大阪地方裁判所で始まりました。

アスベスト被害については全国で訴訟が提起され、和解なども進んでいます。

しかし、これは建設業での話で、造船業については裁判が始まったばかりです。

考えてみれば大きな船の場合、内装作業を行うのが船の中というだけで、建築物の内装をするのと作業自体はあまり変わりません。

ところが、今回の裁判の第1回口頭弁論で、国側は争う姿勢を見せました。

建設業でも争っている訴訟もあるのですが、何か建設業とは異なったものを感じざるを得ません。

これから裁判が進む中で和解が行われる可能性もあります。

しかし最後まで争われることがあるなら、私が感じる違和感は気のせいではないのだと思います。

もし国側が最後まで争うことがあるとすれば、それは建設業と造船業の違いによるものではないかと思います。

建設業では、これからも建物を建て続ける必要があります。

そのために建設労働者の確保は欠かせません。

国側も過去の対応に対する責任ということだけでなく、将来の労働者への配慮というものも必要になります。

これは本来造船業でも変わらないはずです。

しかし、造船業では主要な造船業者が一部の地域に限られていることや、建築物ほどの造船の需要が見込めないことから、造船業の従事者への配慮が疎かにされる可能性があるのです。

そのため、国側が最後まで争うという可能性も否定できません。

責任を認めるか、建設業と同等の和解が行われ、私の懸念が杞憂に終わることを祈りたいと思います。