科学の専門家ではないのですが、思ったよりも、科学記事を読んでいただけているようなので、もう少し書きたいと思います。
最近感じるのは、化学や物理の教科書や参考書が、最近の学問的成果にたどり着きにくい記述になってはいないかということです。
同じ、物理や化学であっても大学レベルになれば専門性による違いも出てきますが、高校までの内容であれば、大きなくくりで科学としての記述がもっとあって良い気がします。
実際は、両科目の関連性に関する記述が薄いように感じます。
例えば、化学で周期表というのが出てきたと思います。
原子が表で並んでいるものです。
アルファベットが元素記号で左側の数字(周期表により若干位置が異なるものもあります)が原子番号で陽子数を、下側が質量数を表しています。
質量数は原子核の数を表しています。
原子核には陽子や中性子が含まれます。
原子には、電子も含まれるため、厳密に言うと、質量と質量数は異なるものです。
しかし、電子の質量は、極めて小さいため、質量数は、ほぼ原子の質量と同じになると説明されます。
しかし、電子の質量が極めて小さいことに違いはないのですが、実際には、現代物理学では、元々量子自体に質量が無かったと言われています。
ノーベル物理学賞により、ヒッグス粒子を記憶している方も多いと思います。
質量が生じる過程は、元々質量が無かった量子に、ヒッグス粒子が働くことで質量が生まれたたというヒッグス機構によって説明されます。
この質量が生じる過程の解明に、大きく貢献しているのが、以前記事に書いた南部陽一郎先生です。
南部先生は、超電導の研究をしていました。
超電導は、金属の種類によっても異なりますが、金属が摂氏マイナス273度近くまで温度が下がると電気抵抗がゼロになるという現象です。
そして超電導物質は磁場を嫌います。
そのため、超伝導物質の上に磁石を浮かすことができる程です。
これを映像で見たことがある人も多いのではないでしょうか。
光は、電磁波の一種ですので、磁気を通さないものは、光も通しにくいのです。
光子には電子は含まれていないため、質量が無いといわれています。
光は、ヒッグス粒子の影響を受けないのです。
にも関わらず、光が超伝導物質(磁気や光を少し通すものもあります)の中に入ると、あたかも質量を獲得したかのように光子が振る舞うのです。
超電導の研究により、何らかの対象性が破れていると考え、超伝導現象の観測によって、光子が質量を持っているかのように見えることから、宇宙空間で、これと同じようなことが起こり、量子が質量を獲得していったのではないかと考えたのが、南部先生です。
これをヒントに、ゲージ対象性が破れ、ヒッグス場でヒッグス粒子が量子に働くことで、質量が生まれたと予測し、後に、スイスにあるCERNで、ヒッグス粒子が観測できたため、2013年にノーベル物理学賞を受賞したのが、ピーター・ヒッグス先生とフランソワ・アングレール先生です。
教科書や参考書の「電子の質量が小さい」という記述から受ける印象とは逆で、元々無かったものがヒッグス粒子の影響を受けて質量を獲得した量子があるというのが、現代物理学に基づく理解なのです。
ただ、こうして獲得した質量は、原子の質量のだいたい1%から2%前後と言われています。
あと、98%以上は何なのか次回書きます。