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シュレディンガーの猫(1)

前回書いたように、量子論から話を始めようと思います。

アインシュタインは、光は波であると同時に粒子であると唱え、ボーアは電子も量子性を持つことを発見しました。

光の二面性を唱えたアインシュタインでさえ、南部先生とのエピソードで紹介したように、量子論に拒絶反応を示したぐらいですから、我々が理解し難いのは当然です。

電磁波の波動の性質を説明できるマクスウェルの方程式に対し、量子の波動の性質を方程式で表したものがシュレディンガー方程式です。

ここから量子力学が始まったと言っても良いでしょう。

シュレディンガーと言えば、有名なのは「シュレディンガーの猫」です。

シュレディンガーの猫とは、実際に行われた実験ではなく、単なる思考実験なのですが、箱の中に50%の確率で毒が噴射される装置があったとして、その中に猫を入れると、量子論の世界では、箱を開けるまでは、猫は死んだ状態でもあり、生きた状態でもあると説明されるものです。

20世紀はじめ、光は波であり粒子でもあるらしいということになりました。

しかし、波と粒子は性質が異なるため同時に成り立たせることはできないという問題に直面しました。

はじめ、ボーアが波として観測するか、粒子として観測するかによって見え方が異なるのだということを言い出しました。

いわゆるコペンハーゲン解釈といわれるものです。

これについて、アインシュタインは南部先生と議論するよりも前に、シュレディンガーとやり取りした手紙の中で、1年後に爆発する火薬樽があるとして、それが現在爆発した状態でもあるし、爆発していない状態でもあるということは、ありえないと書いていたようです。

シュレディンガーも、そんな事はあるわけが無いという例として「シュレディンガーの猫」という思考実験を考えたようです。

我々に、例えを使って量子論を教えようとしてくれていたわけではなく、実際には、「観測するまで物事の状態は確定しない」という考えは「シュレディンガーの猫」のようなことを言っていることになると言いたかったようなのです。

別の例えで説明すると、箱の中に青いボールと赤いボールを入れた場合、取り出してみるまでどちらかわからないけれども、箱な中は、赤か青と決まっていて、結果が隠れているだけと考えているのがアインシュタインです。(隠れた変数理論)

こちらの感覚は理解できる人が多いのではないでしょうか。

これに対しボーアは、箱の中はボールを2つ入れているのに、赤と青が半々の状態(色が混ざり合っているような状態)で取り出すまでは、どちらの色か、まだ決まっていないと言っているのです。

後にこれが、取り出したボールが一方の色に決まると、もう1つのボールの色も確定するという量子論独特の考え方に繋がっていきます。

注意が必要なのは、箱の中身が2色なのでもう一方がわかったことになるのではなく、混ざり合った2色のボールの残り1個も、1つ目のボールを取り出した時点で、同時にもう1色に決まることになるということです。(取り出した一方が赤だったら青だとわかるという説明は古典物理学でもそうなるので、それとの違いが、この説明から伝わるでしょうか?)

理解し難いのは、取り出すまで「わからない」のではなく、赤か青か「決まっていない状態」だと言っていることです。

アインシュタインは、結果は出ているけれども、情報が不足しているため、分からないだけと考えていることになります。

これに対し、量子論では、観測するまで、まだ決まっていないことになるのです。

理解し難いので回を改めて書きたいと思います。

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