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恣意の元凶

4月に行われた東京15区の衆議院議員の補欠選挙で他の陣営の選挙活動を妨害したとしてつばさの党の代表者や候補者、スタッフなどが逮捕されました。

個人的には逮捕されても不思議ではない事案であったとは思っています。

警察庁の長官も「仮に候補者がする選挙運動であっても、他の候補者の演説を妨害する行為が許されることにはならない。自由妨害罪の成立を妨げるものではない。」とコメントしています。

定例記者会見でのコメントですので、詳細な判断過程を説明するものではありませんが、もう少し具体的な基準にも言及してほしかったと思います。

「妨害」という言葉が、既に公職選挙法上の自由妨害罪の結果を先取りしてしまっている感じがするのです。

「犯罪」行為があるから、犯罪の成立を妨げないと言われている感じがするのです。

刑事法の中には、行為を見れば明らかに違法かどうか判断つくものもあります。

しかし、犯罪になるかかどうか微妙なケースもあるのです。

今回も、具体的にどの行為が、犯罪が成立する行為なのか特定してほしいのです。

今回の逮捕については、自らが候補者だとしても、他の候補者が演説している場所で、演説をかぶせ聴衆が聞くことを妨げれば妨害にあたるということなのだと思いますが、距離がどれほど近づけばだめなのか、先にどちらが演説していたのかなど、後々判断に迷うような事案が発生することが考えられます。

その時に、どうなるのかの予測もつきませんし、誰が基準を決めるのか不明確なまま、司法警察活動が行われることに危うさを感じるのです。

誰が見ても良くない行為→妨害→逮捕

というのはわかるのですが、具体的にどの行為がどのような判断基準で違法と評価されたのか明確にしてほしいのです。

繰り返しますが、逮捕案件でなかったと思っているわけではありません。

反対に、つばさの党の代表者が、逮捕前に、逮捕したら警察関係者に危害を加えるという発言をしたことについて、脅迫罪が成立する可能性が高いと考えています。

警察が、行われた犯罪すべてを立件したり逮捕するのではなく、立件しやすいものや、そのうちの罪が重いものについてのみ責任追及するなどの判断はありうると思います。

しかし、明らかにアウトのはずのものが野放しで、なんとなくダメそうなものは基準が不明確なまま逮捕という運用のゆるさは、他の事案でも、犯罪事実があっても事件として認知すらされず、犯罪事実がなくても冤罪事件が生まれる、そういう実害を生み出す元凶となるものです。

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