日本銀行(日銀)の植田総裁が、日銀が買い入れたETF(上場投資信託)を段階的に売却していくことを発表しました。
日銀が、ETFを大量に購入した理由は、アベノミクスの下、現金を大量に市場に供給することで、短期的には使えるお金を増やし、長期的にはお金自体の価値が下がりますから、インフレに誘導する、つまりデフレを脱却することにありました。
この他、ETFを買い支えることで、ETFはもちろん株式市場の相場を押し上げる効果もありました。
実際、株式市場は史上最高値を更新するまで上昇していました。
このタイミングを見計らって、日銀は保有しているETFを順次売却していくことを決めたわけです。
異次元緩和の後始末をするフェーズに入ったわけです。
植田総裁は、日銀の政策決定には総裁になる前から関わっていたので無関係とはいえませんが、ETFの購入自体は、総裁になる前に決められたことです。
年間約3300億円のペースで売却し、同じペースで売却したとしても、売り終わるまでに112年かかる計算だそうです。
どれだけ異次元だったかがわかります。
備蓄米を放出すれば、お米の値段は下がるのですから、ETFを売却すれば、ETFの価格は下がることになります。
実際、この発表を受け、上げ相場だった株価は1300円下がりました。
ただ、出口戦略に手をつけるということは必要なことですので、史上最高値の段階で売却できることは、売却するタイミングとしては、良かったのではないかと思います。
心配なのは、これをきっかけに、せっかく上げ相場にある株式市場が、しぼんでしまわないかということです。
アメリカ(U.S.A)の政策金利が引き下げられたことを考えると、禁じ手といわれた日本の異次元緩和の後始末としては、悪くはないタイミングで出口に向かい始めたといえるのではないでしょうか。
問題は、これから112年間の景気が、ずっと同じではないということと、出口が遠過ぎるということでしょうか。