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重大事件の不起訴理由が公表へ

最高検察庁(最高検)が、先月中旬に全国の地方検察庁(地検)に「検察は不起訴理由を明らかにしていないと批判的に報道され、検察の活動への国民の信頼を少なからず損なっている」と記した文書を配布し、重大事件の被疑者を不起訴にした場合に、その理由を積極的に公表するように、各地検に指示を出しました。

山元裕史次長検事は、このような指示を出したことについて、「個別事件ごとに判断するという従来のスタンスの下、国民の理解を得ることができる広報にする」意図であることを明らかにしました。

まず、日本の刑事司法制度では、起訴するかしないかの判断は、検察官のみが行える、起訴独占主義をとっています。

加害者を訴えるという場合、民事では被害者が訴えることができますが、刑事では、被害者は告訴はできますが、最終的に起訴するかしないかは、被害者や警察が決めることができるわけではなく、検察官だけが決められることになっています。

検察官は、起訴するかしないかの判断を行うだけでなく、その判断理由についても基本的には公表してきませんでした。

報道では、被疑者が不起訴になった場合、「検察は、不起訴理由を明らかにしていません」などと報道されます。

そして不起訴には、やってはいるだろうけれども、容疑がかけられている犯罪の重大性や悪質性などを考慮し、重大とは言えない場合や、悪質とは言えない場合に、不起訴とされることがあります。

この他、犯罪事実を認められるだけの証拠がそろわず、嫌疑不十分な場合や、やっていないことが分かった場合にも不起訴とされます。

そうすると、不起訴には、犯罪を犯したことはわかっている場合から、まったく犯罪は犯していない場合までの、かなり広い幅があることになります。

判断過程を明らかにできないことや、理由を明らかにした場合に、被疑者をはじめ、関係者に生じる不利益を考慮し、これまでは不起訴理由を明らかにしてこなかったわけです。

ただ、本来起訴すべきなのに、起訴されていないという事態も生じうるので、国民からのチェックが働くようにしなければなりません。

今回、不起訴について国民の理解を得られるように、重大事件については不起訴理由を積極的に公表するように最高検から指示が出たわけです。

ただ、理由を公表するかどうか個別判断という検察のさじ加減になっているあたり、公表することが妥当でない場合に、検察による配慮が期待できる反面、恣意的な運用がなされる可能性も残っています。

結局、立法的に解決しようとしないところに、判断権限はもちろん、公表するしないについての決定権は持っていたいという意図が見え隠れしてしまいます。

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