マリオの格好をして公道をゴーカートで走っているのを見かけたことがある方もいらっしゃると思います。
弊所は上野にあるため秋葉原方面からこのゴーカートが走ってくるのをよく見かけました。
たまに事故を起こしてニュースになっているので直接見たことがなくても知っている方はもっと多いことでしょう。
実はこのサービスを提供しているのは株式会社MARIモビリティ開発(旧商号株式会社マリカー)という会社で任天堂株式会社とは関係がありません。
任天堂はこの会社に対してこのサービスの差止めと損害賠償を求める訴訟を提起していました。
任天堂に無断ではまずいだろうと思う方もいらっしゃるとは思いますが、任天堂の請求が当然に認められるとは言いにくい微妙な問題なのです。
キャラクターについては当然著作権が認められるかというと、これについても以前別の裁判になっています。
任天堂とは関係のないいわゆるポパイ事件としてリーディングケースになっている裁判です。
この裁判では「キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想または感情を創作的に表現したものということができない」としてキャラクターは著作物ではないとしています。
読み方が難しいのですが、これはキャラクターが全く著作物にならず著作権が成立しないと言っているのではなく、キャラクターの抽象的な存在は著作物ではないと言っているのです。
言い方を換えると具体的に表現されたキャラクターは著作物です。
つまりキャラクターのビジュアルを絵として真似ると著作権侵害になる可能性が高いです。
仮にビジュアル等を用いない文字などの表現によってキャラクターを登場させても著作権侵害にはならないということになりますが、有名なキャラクターの場合、キャラクター名も商標登録されていたりするので注意が必要です。
今回のマリカー訴訟ではマリオという二次元のキャラクターの格好を三次元の人間にさせるわけですから絵をそのまま真似したわけではありません。
そのためマリオというキャラクターをモチーフにそれに近い格好をしただけなのか、マリオの絵を真似したものであると認定するかによって結論が分かれてしまいます。
ただし、訴訟としては著作権の問題だけでなく不正競争防止法違反についても争われているため区別が必要です。
東京地方裁判所は任天堂の請求を認めました。
この裁判がどの程度キャラクターの著作権侵害を認めているのかは今この記事で書くよりも今後の判例評釈等を待ったほうが良いでしょう。
MARIモビリティ開発の行為は任天堂のサービスと誤認させるような不正競争行為と認定されました。
任天堂の営業損失は大きな額ではないと思いますが、キャラクターの権利保護のためわざわざ訴訟にしたのではないかと思われるケースです。