入国管理法が改正されます。
国会での審議では野党を始めいろいろなところから批判が出ました。
重要な法案であるにもかかわらず拙速ではないかという意見が中心でした。
実際に法案について具体的な記述が少ないことが問題になりました。
野党側からの質問で法律案に何箇所「省令で定める」という表現が出てくるかという質問がありました。
つまり重要なところや具体的な部分が決まっておらず、後から省令で定めるという作りになっているのです。
順序が逆ではないかという主張です。
この辺りは憲法問題になりえます。
憲法は主に人権と統治からなり、このうちの統治機構の方に関わる問題です。
具体的には委任立法という問題に関わります。
国会は国の唯一の立法機関であるため法律は国会が作ることになっています。
行政は国会で出来た法律を執行する機関とされていますが、社会の複雑化や行政サービスの専門家に伴いこのような範囲に係る事項については現場に関わる行政の裁量的判断にまかせ法律の委任に基づき政令や省令を定めることができるものとされています。
ただし白紙委任は許されず法律から独立して政令や省令を定めることは出来ません。
ですから具体的な委任がなければ政令や省令などの委任命令を定めることは出来ません。
委任命令の他に法律を執行するための執行命令というのがありますが、法律の具体的な内容がない場合に内容を執行するための細部を定める執行命令と見ることには無理がありますし、その内容を定めるための委任命令と見るならば今度は法律の具体的な委任があると言えるのかが問題になるのです。
この辺を気にせず必要な法案を通すのが政治的な力と言えなくもありませんが、立法と行政という権力バランスに関わる重要な問題ではあるのです。
立法は主権者である国民の意志によって選出された国会議員で構成されますが、行政の職員は試験で採用され国民の意志は反映されていません。
国民の意志が反映されていない職員によって構成される行政に国民の権利義務に関する事項を定めさせてよいのかということになりますが、今回日本国民ではない外国人に関する問題なので権力バランスの問題はそれ程重視しなくてよいということになると、今度は法律の内容の不備の問題は統治ではなく人権の問題となってしまうのです。
このように抽象的理念的な人権と外国人実習生が3年で69人死亡という人権問題が重なって見えなければ法治国家からは程遠くなってしまいます。
憲法を重視しているからこその改憲論だと思いますが、現行憲法の理念に沿った運用を考えなければ軍事行動を可能にするためだけの改憲論になってしまうと思います。