諫早湾の干拓事業をめぐり堤防の排水門の開門を命じた確定判決に対しその判決の無力化を国が求めた裁判の上告審の判決がありました。
ここで日本の三審制についておさらいしておきましょう。
飛躍上告のケースや第一審が地方裁判所ではないケースは除いて説明します。
通常地方裁判所にはじめて訴訟を提起した場合、これが第一審となります。
第一審で判決が出るとこれを不服とする当事者が高等裁判所に控訴します。
これが第二審です。
もちろん控訴しなければ判決が確定します。
第二審で判決が出てこれに不服があると今度は法令違反があるとして最高裁判所に上告します。
これが第三審です。
諫早湾の裁判はかなり複雑です。
なぜなら開門するしないで地元住民と国が揉めるという問題だけでは済まない問題を含んでいるからです。
第一審から確認してみましょう。
問題の裁判では第一審は国が提訴しています。
この裁判が複雑になっている前提を確認しておきます。
背景として2010年に漁業関係者が開門を求めた訴訟で開門を命じる判決が出ていたのですが、農業関係者が起こした開門に反対する別の訴訟では開門を禁ずる判決が出ていたということを確認しておきましょう。
これが今回の裁判の前提です。
通常確定判決という債務名義があればそれを執行するだけなのですが司法で異なる判断が出ているため開門を躊躇する国は開門を命じた確定判決の効力を失わせる訴えを提起しました。
これが今回の裁判の第一審です。
この第一審で国が敗訴します。
国はこれを不服として福岡高等裁判所に控訴しました。
そして2018年の判決では漁業者の漁業権に更新期限が来て更新時に開門請求権が消滅しているとして開門を命じる判決の無力化を認めました。
これが最高裁判所に上告され今回の判決となりました。
最高裁判所の判決は第二審を破棄し高等裁判所に審理を差し戻しています。
漁業権は一度消滅しても再び免許が与えられる可能性があり開門請求権も認められるとして第二審を破棄したのです。
開門請求権が消滅しているという理由で結果的に国側の主張が通った形なので開門請求権があるという前提で審理をやり直すことになります。
地方裁判所と高等裁判所での審理を事実審、最高裁判所での審理を法律審と言います。
審理する守備範囲が決まっているのです。
最高裁判所は法律審として通常法令違反のみを判断しますが今回のように事実審の審理が不十分なときは第二審を破棄し差し戻すのです。
事実審で審理が尽くされていないという判断です。
言い方を換えるとチャンスは3回あるけれどもその1回のチャンスが不十分だったらノーカウントみたいな話です。