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もう「おかわり」できない

就職活動をしている学生になりすまし、WEBテストを替え玉受験していたとして関西電力社員の男が警視庁に逮捕されました。

男は京都大学の大学院卒業で、通過率95%を謳い、ツイッターなどで、依頼者を募集していました。

替え玉受験と言うと悪いことだということは誰しもが思うところですが、何罪になるかというと難しい問題が出てきます。

まず詐欺罪の成立が考えられます。

詐欺罪の構成要件は相手方を欺罔し(ギモウ:だますこと)、錯誤に陥れ、財産的処分を行わせ、損害を与えることです。

欺罔行為と損害の間には因果関係が必要とされます。

これを故意に行うことで詐欺罪が成立します。

替え玉受験は、企業側を騙し、採用させる行為なので、問題になりそうなのは財産的処分や損害です。

採用した学生が有能で、利益を上げたら詐欺にならないのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、この点は、適正な値段で騙して物を売らせた事例が参考になりそうです。

1万円の物を1万円で売らせたら詐欺にならないのではなく、欺罔行為がなかったら処分行為自体が無かったという関係にあるので、適正な値段でも、財産的処分をさせた事自体で財産的損害があると評価されるのが通常です。

そのため、採用した学生が利益を上げても、採用させた事自体が損害だと見ることは可能だと思います。

これを採用される本人以外の者が行っているので、就職活動をしている学生に利益を受けさせたと言えるのかどうかも問題になります。

このように、詐欺罪とすると解釈上いくつか問題が出てくるからか、捜査資料から得られる証拠の都合からか、詐欺罪では立件しませんでした。

今回この男が逮捕された容疑は電磁的記録不正作出の罪と電磁的記録供用の罪の容疑です。

WEB上で不正なデータを作り出したではないかということです。

1件あたりの報酬はそれほど高額ではなかったようなので、お金目当てというより、得意のテストで自分の実力を示したいという気持ちが大きかったのではないかと推察します。

それにしても、刑事犯罪で逮捕される代償は大きいのではないでしょうか。

ちなみに犯人は替え玉ではなさそうです。

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