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差し止めは認めりゃいい

鹿児島県のレコード会社ニューセンチュリーレコードが、2023年に亡くなった歌手八代亜紀さんのプライベートに撮影されたヌード写真付きのCDを発売すると発表し、波紋を呼んでいます。

死者の名誉を著しく傷つけることは明らかですが、法的な責任を追及することは難しい状態です。

八代さん自身が亡くなっているため、法人格がないからです。

そのため、名誉棄損罪の保護主体は「人」ですから、名誉棄損罪が成立する余地も現行法ではほとんどないのです。

可能性があるとすれば、民事上の責任として、遺族の故人を敬愛する感情が侵害されたという争い方をする他ないのではないかと思います。

このような事態に、署名活動も行われ、多くの署名を集めています。

しかし、レコード会社の社長は、あくまでビジネスで行っているので、法的には問題なく、発売を中止するつもりはないようです。

この社長は、八代さんの生前にも写真の買取りの話を、ご本人に持ち掛けていたようなので、亡くなった後、刑事犯罪が成立しにくいことや、民事上の責任を追及することが難しいことも調べたうえで、発売しようとしているのではないかと思います。

このような事態にレコード会社の存在する鹿児島県の知事が自制を呼びかけるだけでなく、八代さんの出身地熊本県の知事も、発売の中止を求めています。

本来行政の長が、法的根拠もないまま民間企業の活動に口を出すのはいかがなものかとも思えますが、八代亜紀さんが八代市(旧八代郡)出身であり、芸名も八代市にちなんだものだと思いますし、生前の熊本県に対する貢献を考えれば、特に今回のように法的責任を追及しにくい状況では、行政の長が声を挙げるというのも意義のあることではないかと思います。

司法手続きとしては、差し止め請求なども考えられますが、判例からすると、差し止め請求は認められにくい状況です。

事業者側の営業の自由や表現の自由を制約する可能性があるからです。

特に今回の場合は死者の名誉を保護する法的根拠が乏しいため、より認められにくいと思います。

しかし、レコード会社の社長は、権利があるので、文句があるなら買い取ればいいと開き直っていることを考えると、裁判所としては、一旦発売されれば、回復することが著しく困難な損害が生じることから、権利濫用として民事上の裁判の決着がつくまでは、差し止めを認めるべきではないかと思います。

発売の差し止めが認められなかったとしても、個人的には、私が買うことは絶対にありません。

ここでも、死者の名誉を保護する法的根拠が乏しいことや、遺族の感情に対する侵害が、どれだけの「損害」といえるのか判断が難しいことから、実際に差し止められる可能性は低いのではないかと思います。

アメリカ(U.S.A)では、約半分ぐらいの州で、死者のパブリシティも一定の保護を受けられる法律になっています。

日本でも、早急に法改正なり、立法が必要ではないかと思います。

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