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過失がなくても出禁

外国人を不法就労させた場合に過失がなくても退去強制させられるという入国管理法の解釈が争点となっていた裁判の控訴審判決が、東京高等裁判所でありました。

判決は第1審を支持し、控訴を棄却しました。

事案がすぐには把握しにくいのではないかと思います。

退去強制の対象になるのは、不法就労した方であって、不法就労させるのは日本人のはずで、強制退去させられるってどういう状況?と思う方もいらっしゃると思います。

通常は、そのとおりです。

しかし、外国人を日本で使う外国人もいますし、外国人の就労にかかわる外国人もいます。

今回の裁判の原告は、人材派遣会社で契約社員として外国人の採用に関与する外国人女性でした。

この人は、派遣社員として働く外国人の面接を任せられ、その外国人女性が面接し、会社が採用することになったベトナム人が、行方不明になってしまったのです。

その後、そのベトナム人が就労資格がなかったということがわかり、不法就労助長罪の容疑がかけられたのです。

結局、この外国人女性は不起訴処分になりましたが、不法就労を助長したとして、退去強制の対象となりました。

そのためその取り消しを求めて訴えを提起したのです。

不法就労助長罪では、故意または過失が必要となりますが、過失さえない場合に、退去強制処分を認める法の解釈が争点となりました。

この外国人女性からすれば、刑事罰の対象とならないのに、退去強制の対象になるというのはおかしいという考えなのだと思います。

しかし、過失がなくても退去強制は可能という判断がなされました。

法解釈としては、刑事罰の対象となる不法就労助長罪と、退去強制では要件が異なるという判断だと思います。

原告となった女性は、ベトナム人を不法就労させようとしたわけではないのではないかと思いますが、就労資格がないことをきちんと確認しなかっため、助長したと認定されたのではないかと思います。

過失があるようにも思えますが、過失の有無にかかわらず退去強制させられるという判断がなされました。

厳しいようにも思えますが、法解釈としては、ありうる解釈かなと思います。

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