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共通化により違いが浮き立つ

請負契約についての続きです。

旧法でいう、請負人の瑕疵担保責任についての規定について書きます。

旧法では、売買で売り主の瑕疵担保責任についての規定があり、請負でも請負人の瑕疵担保責任についての規定がありました。

似ているようでいて異なる部分があったため、受験生泣かせの学習項目でもありました。

改正法では、債務不履行の不完全履行が契約不適合責任として、広く契約内容に適合しない場合の責任を定めたため、売買の担保責任もこの規定によることになりました。

債務不履行となるか瑕疵担保責任となるかは、契約不適合の部分が引渡し前に明らかになっていたか、引き渡し後に明らかになったかにより区別することになります。

更に、請負においてもこの規定が適用され、条文上は契約不適合として処理されることになりました。

しかし、問題状況はそれぞれ異なるので、条文で統一されても、解釈上は思ったほどスッキリしたわけではありません。

特に請負においては、修補請求と損害賠償請求の間に優先順位はあるのかといった問題や、そもそも修補費用は損害なのか、それとも契約内容に適合した履行をするための費用なのかという問題があり、契約不適合責任と解すれば、これらの問題に対する答えが明らかになるわけではありません。

それぞれの制度の適用場面を意識し、バランスの取れた解釈論を展開しなければならない分解釈の負担は増したかもしれません。

ただ、メリットも有り、以前書いた未完成建物の場合、一定の要件の下に報酬支払請求が認められましたが、未完成であることを契約不適合と捉えれば、民法第634条は建物を完成させてからでないと請求できないはずの報酬を請求できることを定めた例外的な規定と考えることもできます。

このように請負人に一方的に報酬請求を認めるのではなく、未完成部分について、注文者が履行費用として請求する余地も、損害賠償として請求する余地もあることを説明しやすい点でバランスが取れているように思います。

更に、同時履行を定めた民法第533条を注文者側には請負人の先履行を請求できるものと解すれば、完成部分についても、同様に請負人と注文者の関係のバランスが取れるのではないかと思います。

また、建物未完成のケースと目的物に瑕疵があるケースの境界は曖昧ですが、仮に瑕疵はあるものの一応の履行がなされていると捉えても履行費用の請求や損害賠償の請求ができることは、請負人に報酬の全額の支払いが認められたとしても、これと相殺することにより代金減額請求と同じように機能することを考えれば、立証のしやすさや、より高い額となる構成を取る余地があるなど、注文者に選択の幅が出てくるというメリットが出てくるのではないかと思います。

請負契約の規定については、他の分野の改正と異なり、条文をあげて、こうなりましたという記述が少ないように思います。

それだけ、改正によっても解釈の余地が残されている分野と言って良いのではないかと思います。

今回で、しばらく続いてきた民法改正の記事を一旦終了にしたいと思います。

債権法が中心となった今回の改正後にも、民法では相続分野での改正などが行われていますが、相続法については、また別の機会に書こうと思います。

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