相続で実務に影響が出そうな判例が出ましたのでご紹介します。
事案は父親の相続時に配偶者である母親が自分の相続分を子のうちの特定の者に無償で譲渡したというものです。
この後、母親について相続が発生すると父親から相続するはずの母親の相続財産はすでに兄弟のうちの一人に渡ってしまっているので、母の相続時に特定の子に相続させるのであれば他の兄弟は遺留分減殺請求ができるのに父親の相続時に母親が無償で譲渡している場合は遺留分減殺請求をする機会がないまま財産を相続できないのは不当だとして訴訟を提起したという事案です。
地裁や高裁では判断が分かれていました。
今回最高裁の小法廷ですが裁判官の全員一致で判断がなされています。
結論を言うと相続分の無償譲渡は贈与にあたると判断されました。
つまり父親の相続時に母親が特定の子に相続分を無償譲渡する行為は贈与にあたるので、遺留分減殺請求の対象になるという判断です。
相続分が譲渡されてはじめから兄弟のうちの一人が相続したものであるのなら母親の相続時に遺留分減殺請求の対象にはできないのです。
なぜなら兄弟が相続したものなら母親には渡っていないからです。
贈与になるという判断は一度母親に渡ってから贈与として母親から流れたものなので遺留分減殺請求の対象になるという判断へ繋がって行くのです。
ここでは事案に即してご説明していますが父親と母親が入れ替わっているケースでも同じです。
このようなケースはめずらしいものではないため、今後の相続実務に影響が大きい判例だと思います。
ここで遺留分について少しご説明いたします。
遺留分とは法定相続人のうち一定の範囲にある者について法律で認められた相続財産についての最低限の固有の財産的利益をいいます。
一定の範囲の者というのは法定相続人であっても兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
配偶者や子供は遺留分を取り戻すために遺留分減殺請求ができます。
固有のというのは被相続人の意思であっても奪うことができない財産的利益であるという意味です。
最近消費税の増税の話題が出ているので消費税の使いみちとして社会保障について触れられることも多いと思います。
ベーシックインカムという言葉を聞いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
簡単に言ってしまうと困窮時に生活保護を受けるのではなく、あらかじめ国民に一定額を給付してしまうというものです。
現在ベーシックインカムの制度は採用されていませんが、遺留分は相続という制度の中で被相続人が相続財産をあげたくないと思っていたとしても、相続財産のうちの一定額が相続人に流れることによってベーシックインカムのようなセーフティネットの機能も果たしているのです。
相続分野で判例
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