お正月三が日が明けたので相続の話題について書こうと思います。

今年は改正相続法が施行され去年からの改正相続法の施行と合わせて新しい制度が出揃います。

最近株式の相続の記事を読みました。

そこでは紙の株券の取り扱いについて書いてあったので紙の株券のことから書いてみたいと思います。

現在は紙の株券が遺品の中から出てくることは少ないです。

理由は紙の株券を発行していない会社がほとんどだからです。

株券不発行という制度が法上も整備されているためこの制度を利用する会社が多いのです。

紙の株券の発行にはコストもかかるうえ事務手続きが煩雑だからです。

重要なのは実際に紙の株券が出てきたら株主かどうか調べることです。

上場会社の株券であれば証券保管振替機構(通称ほふり)やその会社が株式事務を委託していた信託銀行などで権利関係が判明することが多いです。

ここでいう上場会社と株式に譲渡制限が付いていない公開会社は別概念ですので言葉を整理しておきます。

上場会社は株式市場に上場を認められている会社をいいます。

公開会社とは1株でも譲渡制限が付いていない株式を発行している会社をいいます。

更に注意が必要なのは株式の発行と株券の発行も別概念だということです。

先程書いた株券の不発行会社は株式は発行しているが株券は発行していない会社ということになります。

株式市場での株の取引のためには株式に譲渡制限が付いていては困るので上場基準で公開会社であることが要求されているのです。

そのため上場会社と公開会社は別概念と書きましたが株式市場に上場会社されていれば公開会社と考えて問題ないのです。

上場会社の株券であればデータが電子化された時に特別口座などで管理されている可能性もあるため電子化への移行手続きが必要になる場合もあります。

もちろん紙の株券がなければデータ上の名義書換ということになります。

上場会社のものでなければ譲渡制限付きの株式つまり公開会社でない会社(これ以降非公開会社と書くことにします。)の株式ということなります。

譲渡制限とは第三者に株式を譲渡する場合には承認機関の承認が必要となるなどと株式の譲渡につて会社の定款で制限されていることをいいます。

非公開会社の場合はその株式の発行会社に被相続人が株主かどうか確認してみましょう。

非公開会社ということは市場での株式の流通性はありませんので株式市場で換金することはできません。

自ら株主にはならずに相続する株式を換金したいのであれば個人的に買い主を探すしかありません。

ただし株式ですから買い主は会社に対する支配力を有することになります。

そもそも株式に譲渡制限を付けるのはどのような理由かというと株主の知らないところで買収や乗っ取りが行われないようにするためです。

要するに都合の悪い株主が入ってくることを防ぐためです。

そのため個人的に買い主を見つけたとしてもその人への譲渡を会社が承認するとは限りません。

譲渡承認されない場合には会社に買取請求するという方法があります。

このあたりは相続法というより会社法で規定されている内容です。

売買などの特定承継に譲渡制限を付けても相続は特定承継には含まれないため譲渡承認の必要がありません。

そのため相続によって会社に都合の悪い人が株主として入ってきてしまう可能性があるため会社からの売渡請求という制度があります。

株主は自然人(普通の人間)とは限りません(法人の場合もありえます)ので株式が一般承継(相続や合併など)される場合には売渡請求できる場合があるのです。

会社からの売渡請求があった場合相続人は原則的には拒めませんが会社が提示した額について争う余地があるということを覚えておきましょう。

視点を変えれば非公開会社である中小企業の場合、後継ぎに株が相続されると考えていてもこの売渡請求によって他の株主側に渡ってしまう可能性があるためブレーン(単なる株式保有者の場合もありえます)に会社を継がせたくない事業主の方は相続対策をしておくことが必要と考えた方が良いでしょう。