自らの意思で外国籍を取得すると日本国籍を失うという国籍法の規定が憲法に反するとして国を相手取って提起された訴訟の判決が出ました。
結論から言うと請求は棄却されました。
外国籍を取得した欧州在住の8人の方が原告となって訴訟提起していましたが、東京地方裁判所は請求を退けたため第1審は原告側敗訴ということになります。
控訴するのかどうかは今のところ不明です。
原告となっている方々は主にビジネス上の理由から外国籍を取得した方が多いようです。
海外での仕事の入札や経営上の理由から外国籍を取得したら日本国籍を失ってしまったわけです。
これが自己決定権や国籍離脱の自由を侵害し平等原則にも反するするという立論のようです。
法的な評価としては両方の結論がありえます。
例えば国籍離脱の自由が制限されていると考えることはもちろん可能です。
そのうえで合理的な制約なのだということもできます。
同じことを外国籍の取得により国籍離脱の自由を行使したと考えることもできますし、これに対し1回行使しても無くならないから人権だと考えることもできます。
日本の国籍に対する考え方は二重国籍にはなっても無国籍にはならないような制度運用を目指していると言えます。
ただし多重国籍になることも好ましいと考えているわけではありません。
極端なケースを例に取ると戦争状態になった場合にどちらの国に付いて戦うのかを考えれば、多重国籍が認められにくいということはご理解いただけると思います。
それでも多重国籍を認めている国は世界を見れば結構あります。
もともと紛争に巻き込まれにくかった国、国籍で国という概念を維持しにくい国など国によって背景は様々です。
今のところ日本の法制度は法的に争ってみないとわからないというよりも多重国籍も認めない法制度になっていると言って良いでしょう。