質量の話の続きです。

ヒッグス粒子によって、量子に質量が生まれたということを書きました。

しかし、それは原子の質量の1%から2%前後に過ぎません。

残り98%以上は、何なのか、結論を言うとエネルギーです。

原子核には陽子が含まれます。

ほとんどの原子の原子核には陽子が複数含まれます。

陽子はプラスの電荷ですから、本来反発し合うはずです。

なぜ原子核が分裂せずに、安定しているかといえば、当初ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹先生によって、陽子や中性子以外の中間子(中性子じゃないです)が存在しているからだと予測されていました。

しかし、この中間子も最小単位ではなく、中間子が物質側のクオークと半物質側のクオークによって成り立っていることがわかっています。

その反物質としてのクオークの存在を予測したのが、以前書いた小林・益川理論です。

南部先生の「自発的対称性の破れ」が、小林・益川理論の「CP対称性の破れ」に繋がっていったのです。

このクオークに強い力が働いているため、原子核は分裂せずに安定しているのです。

強い力、つまりエネルギーが残り98%以上の原子の質量の原因と考えられています。

中間子の存在を予測した湯川秀樹先生のライバルに、同じくノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎先生がいます。

量子電磁力学の分野で、くりこみ理論を提唱した先生です。

小林・益川理論では、このくりこみ理論も活用されています。

計算上、ディラック方程式には虚数部分が含まれているはずという推測から、両先生は半物質であるクオークの存在を予測したのです。

ここまでくると数学も必要になります。

朝永振一郎先生は、南部先生にも影響を与えています。

朝永先生の推薦で、プリンストン大学に留学したのが南部先生です。

南部先生は、プリンストン大学時代に、リスペクトしていた相対性理論で有名なアルベルト・アインシュタインと会っています。

南部先生は、アインシュタインにたくさん質問したようですが、アインシュタインは南部先生の研究内容をあまり理解していなかったようです。

2度目に会った時には、アインシュタインは、量子論はあまり信用できないということを一生懸命南部先生に伝えようとしていたようです。

それでも、南部先生の貢献した素粒子論の成果である「強い力」が、「質量」の大きな原因になっているという結論は、アインシュタインが導き出したE = mc²という式と答え合わせができるのです。

この式は、エネルギー(E)は、エネルギーを光速(c)の2乗で割った答えと等しい質量(m)になると読むことができます。

次回、強い力に対し、弱い力について書きます。