佐賀県の吉野ヶ里遺跡で、これまで手がつけられていなかった、いわゆる謎エリアの発掘が進んでいます。
何か出るだろうと言われていましたが、青銅器の鋳型が発見されました。
先に発見されていた石棺墓の近くからの出土です。
剣か鉾の鋳造に使われたものではないかと見られています。
これまで謎エリア以外の部分から、石英斑岩の鋳型が出土していますが、今回特徴的なのは、蛇紋岩の鋳型が出土したことです。
当時、青銅器鋳造の先進地は朝鮮半島でした。
朝鮮半島では鋳造に滑石が使われていました。
滑石は蝋石のような石です。
似ていますが、滑石はマグネシウムを含み、蝋石はアルミニウムを含んでいる点で異なります。
今回出土した蛇紋岩は、滑石に似ているのです。
滑石に似ていて、日本で手に入りやすい石を探したのだと思います。
成分もマグネシウムを含んでいます。
古い時代なので化学分析などは出来ないはずですが、化学的に似た成分の石を選んでいるのはすごいと思います。
現在も、蝋を使ったロストワックス製法という金属加工の技術があります。
本物の蝋と石では根本的に異なりますが、蝋っぽい性質のある石を使って青銅器を鋳造する技術は、正に金属加工の原型となるものです。
入手しやすく加工しやすい青銅器から、鉄器へと加工技術を発展させていったことが伺えます。
青銅器同様、たたら製鉄の技術も朝鮮半島からもたらされたものです。
今回の出土品から、金属が、象徴的な宝飾品から日常使う物や武器へと使われていくことになった原点を知ることが出来ます。