薬不足が深刻です。
一時的なものではなく、構造的な問題を抱えています。
特に、ジェネリック薬と呼ばれる後発薬での不足が目立っています。
様々な原因が考えられますが、新型コロナウィルスを始めとする感染症の増加や、製造工程での不正発覚による回収騒ぎなど、一部のメーカーでは業務停止処分が出たこともあり、業界の構造的な問題として薬不足につながっているのです。
薬は新薬を製造販売する独占的権利を有する先発薬メーカーの独占的販売期間が終了した後に、効果は同じとされますが、より安価な価格で販売されるジェネリック薬と呼ばれる製品があります。
高齢化社会を迎え、国民の医療費負担を軽減する意味もありますが、国の健康保険料の負担の増加も予測できていることから、国はジェネリック薬の利用を推進しています。
低価格で販売すると言っても、薬の製造に一定のコストがかかるのは当たり前で、後発薬だから低価格にしろと言われても、それだけで値段が下げられるものでもありません。
このような状況が、製造工程での不正につながっていき、業界での回収騒ぎ→行政処分がなされる結果となっています。
国内がだめなら海外から輸入すればよいと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、海外でも似たような状況は存在していて、原料となる原薬が手に入りにくくなっているのです。
日本ですら製造工程を守れていない状況があるので、海外の原薬も品質は様々と言われています。
医者も病気になるわけですが、実情を知っている医者ほどジェネリック薬を避けると言われています。
原薬が製造される国や品質によって、効果が同じとされるジェネリック薬の効き目が異なるのではないかということが言われているのです。
原料となる原薬問題の上に、今回の国内メーカーの製造の問題が重なってくるのです。
そのため、食料自給率だけでなく、薬を一定程度国内で製造できるようにしておくことも重要です。
ジェネリック薬製造大手のサワイホールディングスの澤井社長は、各社の製造ラインがいっぱいいっぱいの状況であることや、サワイグループの第2工場が7月に稼働することから、サワイが生産できる薬はサワイに集約することを業界各社に呼びかけています。
余力のあるサワイに製造を集中することで、他社の他の薬の製造の余力を増やすことが狙いです。
業界各社のプライドや利害関係もあると思いますので、先行きは不明ですが、薬不足の打破に向けて、業界各社から様々な提言がなされることは歓迎したいと思います。
また、製薬業界の経営体制だけの問題ではなく、薬事行政とも密接に関連する問題でもあるため、これまでのお上からのお達しにより、各社努力するということでは、どうにもならない問題であることを、行政側も再認識することが必要です。