モルディブ共和国で環境・気候変動・エネルギー省の高官が、ムイズ大統領に対して黒魔術を使った疑いで逮捕されました。

モルディブは、インドやスリランカの南西に位置します。

海面上昇により、海に沈むのではないかと言われている島国です。

そのため、環境担当の役人は重要なポストに就いている人ということになります。

黒魔術は、他人を呪うものです。

呪いによってどんな害悪をもたらそうとしていたか詳細は伝わってきていませんが、日本であれば罪には問えません。

まず、黒魔術で人を呪うことができると考えようが、ある人が死ねばいいだとか、病気になればいいと考えても、それが内心にとどまり、表現などの行動を伴わないのであれば、日本では思想・良心の自由(憲法第19条)の問題、特に内心の自由の問題であるため罰せられることはありません。

内心に加え、何らかの行動を伴うと微妙になってきます。

呪われればいいとする内容を発言した場合、内容によっては脅迫罪(刑法第222条)、名誉毀損罪(刑法第230条)、侮辱罪(刑法第231条)などに問われる可能性が出てきます。

ただ、呪いの儀式を行ったとしても、日本では、それによって人に害悪をもたらすことができる行為だとは考えられませんので、刑法でいう実行行為にあたらず、犯罪は成立しません。

これを不能犯といいます。

結果を発生させるだけの危険性をもった行為だとは考えられていないのです。

行動を伴っていたとしても、呪いの儀式だけなら日本では不能犯として処罰されないのです。

これはモルディブでも同様で、モルディブでも処罰する規定は無いようです。

ところがモルディブはイスラム教国なので、イスラム法により罰せられる可能性があるのです。

このように黒魔術が信じられ、罰せられることがある国では、反対に何か悪いことが起こっているのは誰かが黒魔術によって呪いをかけているに違いないとして魔女狩りのようなことが行われることがあります。

動機との因果関係が怪しげな場合であっても、直接危害を加えれば、罰せられるのは日本と同じです。