内閣府が、職員を対象に「賃上げを幅広く実施するための政策アイデアコンテスト」を実施しました。
優勝アイデアとして表彰されたのは、残業時間は会社員を個人事業主として取り扱うというアイデアです。
企業側としては、支払う報酬分に対する社会保険料の支払いが無くなるというメリットがあります。
従業員側としては、会社員としての給与ではないため、所得税の源泉徴収や社会保険料の控除が無いといったメリットがあります。
それに加え、報酬自体も残業代の割増などがない分、本来の残業代よりも委託報酬を低く抑えられるというメリットがあります。
従業員側にはデメリットにも思えますが先程書いたように、控除分がないため実質的には手取りアップにつながるのです。
経済的には、両者にメリットが多いため、優勝アイデアに選ばれたと思います。
しかし、これが社会保険料の支払いや労働法の脱法につながるスキームではないかと批判を浴びているのです。
確かに、税金や社会保険料の制度や労働者の保護を実施しなければならない側が、脱法スキームを高く評価してしまうのはどうかと思います。
よく考えてみれば、所得税が源泉徴収されないといっても、複数の収入を得ることになるため、確定申告が必要になります。
慣れない人が確定申告をする労力や自分で確定申告できない場合に税理士などに依頼する費用を考えると、手取りが本当に増えているのかどうかも微妙です。
更に、社会保険料がかからないという点についても、労働者として取り扱われないということでもあるので、労働法による保護が薄くなる可能性もあるのです。
事故や怪我などをしても労災が下りない可能性もあります。
以上のような点を考慮すると、脱法かどうかだけでなく、優勝アイデアとして評価できる程のアイデアではないように思います。
ただ、この手のアイデアコンテストでは、様々なアイデアを出すこと自体にも意義があると思います。
使用者側と従業員側双方に経済的メリットが生じる方法を考えようとしたことや賃上げではなく所得を増やそうとした発想などは悪くないと思うので、特別賞ぐらいにしておけばよかったのではないかという気がします。
ただ、このような意見も社会保障や労働法の専門家からは怒られそうな気がします。