農林業での鳥獣被害は深刻です。
鹿も、被害を生む動物のうちの一種です。
鹿の場合、農林業だけでなく、自動車の交通事故の原因や鉄道交通に対する障害にもなっています。
鉄道関係者の間では鹿がレールを舐めに来るということが知られていました。
レールを舐めることでミネラル分補給していたわけです。
これをヒントに、熊本県の水俣市で、食塩水でニホンジカをおびき寄せるという実証実験が行われていました。
2022年の6月、9月、11月の3期に食塩水を設置し、2023年の10月まで、自動撮影の映像で鹿を観察しました。
結果は、メスが1009回のみに来たのに対し、オスは147回でした。
これは、春から夏にかけてが鹿の出産と授乳期にあたり、メスの鹿がミネラル分を補給しようとしていることが原因のようです。
これにより、食塩水により、メスの鹿をおびき寄せることができるということがわかりました。
つまり、この方法でメス鹿を捕獲すると、鹿の個体数を減らすことができるということになるのです。
鹿による害獣被害の防止策として注目されています。
人間にとっては、取り過ぎに注意しなければならないといわれている塩分ですが、動物にとっても必須のミネラル分であるというのは共通のようです。
人間でも大量に汗をかく場合には、積極的に塩分を摂取する必要があります。
ニホンジカの場合、もともとお乳のナトリウム濃度が高いため、授乳中の鹿は、積極的に塩分を補給する必要があるのです。
今回、食塩水でニホンジカのメスを選択的に捕獲できることがわかり、シカの個体数をコントロールする手段として期待されています。