昨日、実の父親から子供の頃に性的虐待を受けていたとして損害賠償請求をした女性の裁判の上告審が、最高裁判所で、除斥期間の経過により棄却されたという記事を書きました。

この事件について、性的虐待が実際にあったかどうか、私にはわかりません。

このような事件について、除斥期間、現行法では消滅時効を設ける必要性があるかどうか疑問に感じていたため記事にしました。

40代になって訴訟提起した女性は、遅くとも20代頃には精神的苦痛が生じていた、つまり権利行使可能であったので、除斥期間が経過していると判断されたわけです。

いつ頃から権利行使可能であったかどうかは、裁判所の匙加減しだいの部分があります。

にもかかわらず、除斥期間の経過により、請求を認めませんでした。

これについては、単に被害時から時間が経っているので、形式的に法律を適用しただけということもあり得ます。

しかし、下級審の裁判所としては他の事情を考慮して請求を認めなかった可能性もあります。

推測になりますが、それについて書きたいと思います。

今回の事件で、被害者とされる女性が損害賠償を請求した相手は実の父親です。

女性が40代になっていることを考えると、父親である男性は働き盛りを過ぎています。

そのような父親に対して、損害賠償を請求するほど、女性にしてみれば、父親が許せなかったといえるかもしれません。

ただ、相手は実の父親ですから、被害者とされる女性とは実の親子です。

損害賠償請求を認めなくても、いずれ相続により、父親の財産は、娘である被害女性に移ることになります。

父親に財産がない場合はどうなるのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、その場合は判決をとっても、執行できませんので結局同じなのです。

これはあくまで推測で、裁判所がこのような事情を考慮したかどうかは不明ですが、裁判官はこのような利害関係を考慮する能力にたけています。

もしかすると、この辺の事情も見据えて、除斥期間の規定を適用した可能性もあります。

事件の解決にあたり、裁判所は当事者の主張しない事実は考慮しないことになっています。

ただ、法律の適用については裁判所の専権なので、下級審が法の適用に際して以上のような事情を考慮した可能性は否定できません。

最高裁判所の判断については、法律審なので、下級審の判決に憲法違反がないという判断だったことを付記しておきます。

以上の推測が当たっているかどうかはわかりませんが、被害者とされる女性としては、相続にかかわらず、父親に対して今現在、金銭的な償いをさせたいほど恨みが深いということは言えるかもしれません。