死刑が確定していた死刑囚について、再審請求中に死刑が執行されたのは、裁判を受ける権利(憲法第32条)や適正手続きの保障(憲法第31条)に反するとして、国に損害賠償を求めた裁判の判決が、大阪地方裁判所でありました。

結論を言うと、裁判所は、この請求を棄却しました。

つまり、再審請求中であっても、死刑を執行することは問題ないということになります。

理由として、「裁判を受ける権利」は罪に問われた被告人が、独立公平な公開法廷で審理され、判決が言い渡されることを保障した規定であり、再審手続きは含まれないとしました。

言い換えると、再審請求権は、裁判を受ける権利によって保障されているわけではないということになります。

この死刑囚については、死刑が執行されてしまっているため、訴えを提起したのは、この死刑囚の当時の弁護人です。

再審の請求は、刑が確定している人間が生きていなければできないわけではありません。

ただ、今回は刑が死刑ですので、死刑が執行された後に、無罪となっても手遅れなわけです。

このように手遅れにならないように、再審請求があったら、死刑の執行を一旦停止してもよさそうです。

しかし、このようなことを認めると、死刑の執行を引き延ばすために、再審請求を行うということが行われ始める可能性があります。

さらに、現行の法制度では、再審手続き自体が、法律で詳細に規定されているわけではないのです。

裁判官の匙加減的なところがあります(自由に決められるという意味ではありません)。

そのため、現行法を前提に考えると、裁判を受ける権利に、再審請求手続きが含まれないという考えは十分に成り立ちます。

ただ、事は人の命がかかっていることですので、現行法の解釈では難しくても、再審手続きを法定すべきなのだと思います。

最近でも、袴田元死刑囚の無罪判決がありましたので、現行法では無理でも、再審手続きを法定し、その中で死刑囚についての再審手続きも定めるべきなのだと思います。

なるべく死刑の執行を妨げないような手続きで、再審請求が可能になるような手続きを考えていくべきなのだと思います。