ふるさと納税をめぐって、様々な利害関係が錯綜しています。
ふるさと納税によって、税収が増えている自治体もあれば、減少する自治体もあります。
公的な納税制度にかかわるため、過度の返礼品や付加サービスには、歯止めがかけられるようになっています。
そのような制度変更があっても、各自治体は返礼品を工夫し、ふるさと納税サービスを提供する企業側も、ポイントの付与などで差別化を図ろうとしています。
最近の傾向としては、電気料金が上がる中、返礼品として、「電気」を返礼品にする自治体が増えています。
正確には「電気」というよりも、電気料金の割引といった方がよさそうです。
寄付額のうち3割以下の額が電力会社に「返礼品」として渡り、そこから費用などを一部差し引いて、寄付者の電気料金が割り引かれるという仕組みになっているところが多いようです。
自治体にとっては電力会社に渡すお金が「返礼品」ですが、寄付者にとっては、電力会社から割り引かれる分が、実質的な「返礼品」です。
一方、ふるさと納税サービスを提供する側については、楽天グループは、これまで、利用者が、ふるさと納税する際に、ポイントを付与していましたが、今年10月から、これが禁止されるため、ポイント付与を禁止する総務省の告示について、無効確認の訴えを東京地方裁判所に提起しました。
自治体に寄付する際(実質的には返礼品の購入)の決済時は、クレジットカードのポイント付与が認められているため、上限を設けるなどの方法ではなく、一律禁止することは、過度の規制であり、裁量権を逸脱、濫用しているという主張です。
一理あると思います。
楽天グループは、これまでにも、大衆薬の通信販売解禁後に、要指導医薬品については、対面販売を義務付けられ、ネットでの通信販売が禁止されているのは、違憲だとして訴えを提起したことがありました。
訴訟は、最高裁まで行き、要指導医薬品への規制は合憲とされ、楽天側が敗訴しましたが、事あるごとに営業の自由を背景に規制の撤廃を求め、訴えを提起する姿勢は評価してもよいのではないかと思います。
一方行政も、公的な利益を守る立場から、医薬品の販売では、薬の適正な服用や、悪用を防ぐために規制し、ふるさと納税では、納税の際に過剰なサービスが提供されることを規制しているわけですから、こちらにも一定の合理性はあります。
お互いの主張を述べあう訴訟で理由の合理性を確かめるということは、社会的にも意味のあることであり、訴権の濫用とは言えないのではないかと思います。