参議院選挙が近いため、特定の政党や候補者について記事にすることは控えたいのですが、選挙の際には、様々な意見が飛び交い、中には事実に反するものや、他の政党や他の候補者を貶める言説もみられることがあるため、ファクトチェックとして取り上げられていた問題について書きたいと思います。
参政党のある候補者の演説で、「外国人は生活保護を受給する権利はない」として、日本人は申請しても「門前払い」で「外国人ばっかりというのはおかしい」という内容の演説がありました。
まず「外国人は生活保護を受給する権利はない」という部分については、事実といえます。
人権の一種である生存権からすれば、外国人にも生活保護の受給権がありそうですが、生活保護法の1条に「生活に困窮するすべての国民に対し必要な保護を行う」とあるので、原則的には「国民」が対象となります。
外国人の人権については、判例で、性質上可能な限り外国人にも保障されることになっていますが、生活保護のような財源を伴う措置の場合、一次的には、その外国人が国籍を有する国が考えるべき問題ということになります。
ただ、人権にもかかわることなので、生存権保障の要請もあり、厚生省(現厚生労働省)は、1954年に外国人は生活保護法の対象にならないが、困窮する外国人には日本人への生活保護の取り扱いに準じて措置をするという通知を発しています。
そのため、権利ではないが、外国人でも受給できることがあるというのが正確な内容になります。
税金を払っていた外国人からすれば、いざという時、生活保護がもらえないの?と思うかもしれませんが、日本にいる以上、もらえないというリスクは覚悟しておく必要があります。
次に、日本人は「門前払い」は、一部本当で、一部事実に反するといえそうです。
本来生活保護を受給する権利があるにもかかわらず、日本人なのに適正な取り扱いが受けられない人がいることは事実です。
ただし、これは例外的に不適切な取り扱いがなされてしまうことがあるということであって、日本人に限って門前払いにするという事実はありません。
最後に「外国人ばっかり」という部分については事実ではありません。
今年4月時点での統計になりますが、全国の生活保護世帯のうち、外国人が世帯主の家庭が生活保護を受けている割合は、2.9パーセントです。
とても、外国人ばかりといえる数ではありません。
このような部分は、事実ではない意見というより、意見でもなく、事実ではない事実のような発言ということになります。
おそらく、外国人は日本で仕事を見つけにくい状況があり、生活保護を受けていると、人種などビジュアル的にも目立ちやすいため、外国人受給者を多く感じる日本人がいるというのが実際のところではないでしょうか。
このように、候補者を含め、選挙の際には様々な発言が飛び交うため、事実関係を確認し、事実に基づく政策を提言している候補者を選ぶことが重要になります。