サントリーホールディングスの新浪剛史会長が、辞任しました。
自身の元に送られたサプリメントに違法な成分が含まれていて、警察からの捜査を受けたことによるものです。
ご本人は関与を否定しています。
名だたる企業の経営に携わった、日本では珍しい経営を専門にする人ですが、経営以外の法に触れているかどうかとは別問題です。
ただ、ご本人が海外からの送付を頼んだものではなく、違法な成分を含んだものという認識もなかったと釈明しています。
違法な成分と言われているのは、大麻由来の成分です。
弁護するわけではないのですが、全くの噓とも言えないのではないかと思いますので、少し説明したいと思います。
まず、これまでの大麻取締法や麻薬取締法が改正され、令和6年の年末から新法が施行されています。
旧法では、大麻取締法で、大麻の所持や栽培が禁止されていました。
意外かもしれませんが、旧法では大麻の「使用」は禁止されていませんでした。
これは、医療用の大麻など職業で大麻成分を含んだものを取り扱わなければならない人がいるため、検査で成分が検出されたからと言って、必ずしも違法とは限らないという理由によるものでした。
薬物使用が社会問題になったこともあり、この旧法が改正され、従来の大麻取締法は、栽培を主に規制する法律として存続し、大麻の「使用」を含め、所持などは麻薬取締法で規制されることになりました。
大麻の主成分は、THC(テトラヒドロカンナビノール)です。
大麻草としてだけでなく、現在は、主成分のテトラヒドロカンナビノール自体が取り締まりの対象となっていますので、ご存じの方も多いと思います。
これとともに、大麻に含まれる成分としてCBD(カンナビジオール)があります。
現物を確認していないので確かなことは言えませんが、今回問題になっているサプリメントに含まれていたのは、THCではなくCBDなのではないかと思います。
CBDには向精神作用がないとされ規制の対象にはなっていません。
ただし、麻薬取締法では大麻自体ではなく、THCという成分自体を規制していますので、CBDにTHCが一定程度以上残留していれば規制対象となるのです。
したがって、仮に新浪氏に、海外で購入したサプリメントにCBDが含まれているという認識があっても、THCが一定程度以上含まれているという認識がなければ、違法な薬物であるという認識はなかった可能性があるのです。
実際、新法が施行されて間もないことや、商品の成分表示のされ方などを考えると、知らなかった可能性はあるのではないかと思います。
その辺を問題とせずに、旧法の大麻取締法で所持が禁止されているという報道や、送付されたサプリが、一般に違法性の認知度が高いTHCであったかのような報道があるため、公平な報道とは言えないのではないかという気がします。
新浪氏が責められるとすれば、人に勧められて、仮に違法でなくても怪しげなサプリに手を出してしまったことや、サントリーはサプリメントも商品にしているので、時差ボケ解消のためとはいえ、自社製品ではないサプリを使用していたことが分かったことにより、会社の製品へのイメージをダウンさせてしまったことではないかと思います。