犯罪を行ったか、あるいは犯罪を行ったという嫌疑をかけられた人には弁護士を付ける権利が認められています。
経済的な理由により、自費で弁護士を付けられない人には、国選で弁護士を選任できることになっています。
これは、必ずしも無実を前提としているということではなく、無実である可能性もあるし、仮に犯罪を犯していたとしても、適正な手続きや適正な処罰がされなければ、犯罪者の人権を侵害することに変わりはないため、罪を認めている人の人権保障のためにも必要なことです。
しかし、考えてみれば、被疑者の権利が保護されているのに、被害者の権利は自分で守れというのもおかしな気がします。
被害者側の人権が、十分に保護されているとは言えない状態だったのです。
このような状況を、改善するため、犯罪被害者やその遺族らが、公費で弁護士を選任できるようにする制度が作られようとしています。
総合法律支援法という法律が改正され、改正法が来年から施行されることになっているのです。
施行日を定める政令が閣議決定されました。
対象となるのは、すべての犯罪の被害者ではなく、殺人、強盗殺人、傷害致死、不同意性交、不同意わいせつなどの被害者や遺族です。
被疑者の国選弁護の場合と同じように、資力について一定の資産以下であるという要件も設けられます。
それ以外の細かな要件については、来年の施行日までに法務大臣が認可することになっています。
弁護士費用の問題以外にも、被害者の実名や顔写真は報道機関の個別判断により報道されることがあります。
被害者やその家族が望まない場合に、それに配慮する報道機関がある一方、被害者側の意思に反し報道する報道機関が1つでもあれば、あまり意味がない状態となります。
かといって、法的に裁くだけで済ませられず、社会問題として捉えなければならない事件については、正しい情報の一部として具体的な被害者が伝えられる必要性も否定できません。
これまでは、被害者の情報を伝えることにより、世の中の加害者への社会的非難を促すことになるため、被害者側の不利益への配慮が欠けていた部分があります。
同じように、加害者の家族も、あくまで犯罪者自身とは別人格であるため、犯罪への関与がないのであれば、加害者家族の権利や自由も保護されなければなりません。
このように被疑者以外の人の権利保護については、考えなければならない問題はたくさんありそうです。