職場での特定民族への差別文書を配布されたことに対して損害賠償を求めていた裁判の控訴審判決が大阪高等裁判所でありました。

大阪高裁は第一審と同じく文書配布の違法性を求め、原告女性の主張を認め132万円の支払いを認めました。

文書は女性が勤務する不動産会社で配布されたものですが、第一審、控訴審ともに裁判所での認定は原告個人への差別的言動ではないというものです。

配布された文書は差別的ではあるが原告個人に対する差別では無いと認定しているのです。

そのうえで従業員には差別的思想を醸成する行為が行われない職場で働く人格的利益があるとという理由で処分書配布の違法性は認めているのです。

つまり個人に対する差別ではないが、文書の配布自体には違法性があるという認定です。

ここには人格的利益という憲法上の理由が示されています。

被告側は裁判所の判断が言論に対して極めて重大な影響を及ぼすとして上告する方針のようです。

ただ事実審で人格的利益への侵害が認められているため、最高裁で事実認定の誤りなどが指摘されない限り、上告審でも文書配布の違法性は覆らないのではないかと思います。

控訴審での判決が出たばかりで、上告される可能性があるということは裁判はまだ確定していないということでもあります。

通常裁判が確定していなければ判決が執行されることはありません。

しかし今回の件では、第一審の判決後も問題の文書の配布が続いているため、裁判所は文書配布の差し止めを認める仮処分決定を出しました。

被告側が主張するように、被告にも言論の自由がありますが、判決の確定を待っていては、当事者の一方に重大な権利・利益の侵害が生じるような場合には相手方の行為を禁じる仮処分の決定が出されることがあります。

状況に応じて当事者の救済を図っているのです。