小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」による健康被害が出ている件で、原料を製造している工場の検査から、プベルル酸は、原料の製造過程で青カビによって産生された可能性が高くなっています。

同時に未知の化合物が2種類検出されていました。

文献やデータベースへの登録がないことから、これらの化合物は未知の物質であるとされていました。

今回、国立医薬品食品衛生研究所が小林製薬や近畿大学と共同で、これら2種類の化合物の化学的構造を解明し、論文をジャーナル・オブ・ナチュラル・メディシンズに発表しました。

未知の化合物は「紅麹コレステヘルプ」の有効成分である「モナコリンK」に化学的構造が似ていて、青カビがモナコリンKの抗菌作用を無力化しようとして1つ目の化合物ができた可能性があります。

この1つ目の化合物が更に変化して2つ目の化合物ができたようです。

紅麹に含まれるモナコリンKは、コレステロールを下げる成分で、この成分を含む紅麹は、食べ物だけでなく漢方でも古くから用いられています。

コレステロールを下げるスタチン系の薬の発見者である東京農工大学特別栄誉教授遠藤章さんが最近お亡くなりになりましたが、モナコリンKは、そのスタチン系の薬の1種であるロバスタチンと同じものです。

現在コレステロール抑制のための薬として多く処方されているロスバスタチンとは、名前は似ている仲間ですが、異なるものです。

遠藤教授がお元気であれば、今回の件について更に詳しいことがわかったかもしれません。

おそらく、ワクチンに対してウィルスが変異することがあるように、モナコリンKの抗菌作用に対して青カビが抵抗することで今回の化合物が生み出された可能性があるのではないかと思います。

スタチン系の薬が発見された時、動脈硬化に対するペニシリンと言われましたが、菌類が生み出す成分は毒にも薬にもなるのだということがわかります。

このようなことがわかってくると、プベルル酸も他の化合物も、紅麹から産生されたというより、紅麹の成分に対して、青カビが酵素により防御しようとした際に産生されたのではないかという疑いが出てきています。

紅麹が原因ではないかという当初の見方と、事実関係は大きく異なるといってよいのではないかと思います。