通信アプリ「テレグラム」を提供するテレグラム・メッセンジャーLLPのCEOパベル・ドゥロフ氏が、フランス(フランス共和国)で逮捕されました。

違法な投稿を監視・削除するコンテンツ・モデレーションを怠ったことがテレグラムを利用して行われる犯罪の共謀にあたり、それぞれの犯罪の共犯にあたるという嫌疑によるものです。

テレグラムはサービスの持つ秘匿性から、犯罪に利用されていることは広く知られています。

しかし、秘匿性が高いということ以外、他のサービスとあまり異なるところはありません。

提供しているサービスが犯罪に使われることがあるというだけです。

この場合、サービスを提供しているだけで犯罪とすることは難しいと思います。

刃物を売ったら、その刃物を使って人を傷つけた人間と共犯になるのかという問題と同様の事案だからです。

そのうえで、フランスの検察は、違法な投稿を放置したことが、犯罪の共謀にあたるとして逮捕しました。

共謀については、犯罪関係者が一堂に会して、事細かに役割などを相談する以外の方法でも、行われる場合がありますので、比較的緩やかに解することには賛成ですが、放置即共謀という判断は、少し極端な気がします。

仮に民間企業が、投稿内容を検討し、訂正や削除を要求しても、現在の日本の検閲の定義からは、検閲にはあたらないことになります。

ただ、このような監視・削除義務を厳格に課し、放置した場合に逮捕ということになると、民間企業が行う場合とは異なり、事後の逮捕を通じて、検察が、検閲を行っているのと同様の状況になりますので、問題が出てきます。

実際今回の逮捕についても同様の批判が出ています。

他方で、テレグラム以外のサービスでも同じような問題が発生しているため、規制するための解釈として歓迎する向きもあります。

いずれにしても、現行法の解釈のままで犯罪とするのではなく、何らかの規定が必要ではないか思います。

犯罪のためにサービスが提供された場合と勝手にサービスを利用して犯罪が行われてしまった場合の区別が曖昧になるからです。

フランスの検察は、監視・削除義務を怠ったことを要件としたわけですが、犯罪といえるほどの義務違反になるかどうか、しかもその義務が刑事上の義務として明示されていたのかどうか、疑問の残るところです。

表現の自由や営業の自由に優越していると考える理由が、犯罪の被害者の法益の保護なのか、ロシアに対する反発感情がそこにはないのかなども気になるところです。

ただ、テレグラムが犯罪手段に利用されるだけでなく、ロシア(ロシア連邦)の軍事的な通信手段に利用されていることも考えると、フランス当局の判断も、一律に非難しにくい程、利用範囲が広がってしまっています。