原子力規制委員として、原子力施設の審査にあたる委員のうち約10年委員を務めた2名が、任期を終え退任することになりました。
福井県の敦賀原発2号機では原子炉直下の断層が、活断層であるおそれが否定できないという調査団の報告書を受け、審査書案をまとめた方々です。
原電側はこれに反発し、活断層でないことを証明することは、「ないこと」の証明として、俗に言う悪魔の証明だと批判していました。
確かに、日常様々なことについて、「ないこと」を証明することは困難です。
1つでも反例を挙げられれば、論理的に証明できていないことになってしまうからです。
あらゆるケースで、そのようなケースが「ないこと」を証明することは事実上不可能に近くなります。
しかし、これは論理上の問題で、状況によって、その難しさは変わってきます。
証明対象は活断層かどうかですから、地下の問題であるにしても、現在の科学的知見で、ある程度のことはわかります。
そのうえで、活断層の可能性を否定できないなら、動く可能性があるということになってしまいます。
そもそも、原子力発電所の場合、証明が難しいとしても、原子炉建屋直下の断層が、活断層であることを否定できていないなら、なぜ建てられたのかという疑問が湧きます。
証明が難しいから建てましたというのでは理由にならないのです。
退任する規制委員の1人は、「悪魔かもしれないが、大した悪魔ではない」と発言しています。
そのとおりで、ことは原子力発電所の問題ですが、活断層でないことの証明を求めることは、決して無理な要求をしているわけではありません。
安全に関わる重要なことなので、安全が確認できないなら廃炉ということもやむを得ないと思います。
もったいない、もったいなくないという問題では済まないのです。