2018年、大阪市生野区で聴覚障害特別支援学校に通う生徒さんが、重機にはねられ死亡するという事故がありました。

建設会社に、遺族が損害賠償を求めていた裁判の控訴審判決が大阪高等裁判所でありました。

第一審の大阪地方裁判所は、被害者に聴覚障害があったため、逸失利益として労働者の平均賃金の85パーセントを相当としていました。

これに対して、大阪高等裁判所は、健常者と同等の逸失利益を認めました。

この判決を、障害者の逸失利益は、健常者と同等と一般化して読むことは、誤読につながる可能性があると思います。

今回の事故の被害者である聴覚障害児童の場合、小さな声は聞こえにくかったですが、通常の会話は聞こえ、補聴器を使うと、ほぼ会話可能であったようなのです。

つまり、今回の被害者の場合、聴覚障害はありますが、かなり健常者に近い仕事ができた可能性があるのです。

そのため、障害者一般の逸失利益に、この判旨を適用できると考えると、判断を誤る可能性が出てきます。

被害者保護に厚い判決として歓迎すべきだとは思いますが、障害者全体に一般化して考えるべき判決ではありません。

就労に支障をきたす程の障害がある場合は、逸失利益は依然として制限される可能性の方が高いのではないかと思います。

これについては、加害者に同等の賠償が認められなくても、生きていれば国や自治体が支出するはずの手当てを、負担を免れているとしてプラスすることで同等まで持っていくなどの方法が考えられます。

ただ、そのような認定は、今のところほとんどなされていないようです。

一身専属性などが問題になるのかもしれません。

まずは、請求してみるところから始めなければなりません。

それでも駄目なら、法改正や特別法の制定という方法もあります。

皆さんは、障害によって減額される部分を社会全体が負担すべきと考えることに反対でしょうか。

今回の裁判では、健常者と同等の逸失利益が認められましたが、事故自体は、聴覚障害が事故につながっている可能性もあるため、切ない事故ではあります。

被害者の方のご冥福をお祈りいたします。