放射線を浴びるとDNAが損傷することが知られています。
人間も例外ではありません。
一般に動物よりも植物の方が放射線には強いそうです。
中でも強いゲノム維持機能を有するとされているのが、ヒメツリガネゴケです。
放射線への強さを、どのように比べているかというと、強い放射線を照射した場合の生存率で比べているようです。
放射線を照射した場合の、最も大きなダメージは、DNAの二重らせんが両方とも切れてしまうことです。
ヒメツリガネゴケの場合、このように二重らせんが、2本とも切断されてしまった場合に、自ら効率よく正確に修復しているという研究成果を、量子科学技術研究開発機構とフランスのパリ・サクレー大学の研究チームがまとめ、発表しました。
2つのDNAの鎖のうち、同じ配列の部分を交換する相同組み換えという方法でDNAを修復しているようです。
DNAの二重らせんというと、子孫を残すためにDNAを正確に複製する機能が知られていますが、同じ個体のDNAの修復のためにも機能しているようです。
この他、ヒメツリガネゴケは、一度分化した細胞でも、損傷などの刺激を受けると、分化してしまっている細胞を、再び幹細胞に変化させて再生することが知られています。
不可逆と思われる細胞の成長の中で、今話題のiPS細胞を自分で作り出して再生しているわけです。
このように、ヒメツリガネゴケは、人間の体の再生や、放射線のダメージの軽減、回復といったことに役立つ情報を秘めた植物といえます。
今回の研究では、このうち放射線のダメージ修復のメカニズムが明らかになったのです。
今回の研究については、メンバーにはいませんが、2021年に亡くなられた横田裕一郎さんの研究成果が大きく貢献しているのではないかと思います。