岩井コスモ証券(大阪府)が、顧客から徴収してきた税金の計算について、正しいかどうかが争われ、東京地方裁判所で既に判決が出ています。

裁判所は、原告である顧客の主張を認め、過大に徴収した分の返還を命じました。

同社は、控訴をしていませんので判決は確定しています。

外国会社の株式の会社分割に伴う交付分なので、国内で一般的な株取引をしている人の多くが、関わるということでもありませんが、国内での外国株取引は普通に行われているうえ、問題になっている計算方法は、数十年にわたって行われてきたため、他の取引や顧客に対しても同様の問題が生じうるため、レアケースということでもありません。

問題になった取引は、アメリカ(U.S.A)通信大手AT&T社の株式についてです。

AT&Tは、事業の一部を切り離すために、会社分割を行い、新設会社の株式を、株主に交付していました。

これについて岩井コスモ証券は、交付された株式について「みなし配当」として所得税を源泉徴収したのですが、交付額全額を基準に徴収額を算定していました。

「みなし配当」という認定は誤っていないのだと思いますが、税金の計算根拠にした額に相違があるのだと思います。

ざっくり説明すると、交付額全額を課税対象としているということは、取得原価がかかっていないと考えていることになるのだと思います。

実際には、新設分割する前の会社の株式への出資をしているので、新設分割会社の株式の交付額から会社分割前のAT&Tの株式の保有数に対する簿価を差し引いた部分に課税されるというのが正しい考え方ではないかと思います。

源泉徴収分ですから、余計に徴収した分を、岩井コスモ証券が懐に入れていたということでもないのだと思います。

証券会社がずるいというより、原告の顧客がよく気づいたなと思います。

徴収した税金の返還を求めることになる事案だと思いますが、税金の取り戻しの時効が5年だと思いますので、同様の計算による税金の徴収が数十年続いてきたことや、他の株式の取引や、これまでの徴収分に対する影響を考えると、他のトラブルに発展していく可能性もあると思います。