相続財産は三代で無くなると言われることがあります。
これを含め、相続税についての大まかな考え方を書きたいと思います。

今回は主に財産を残す方、被相続人となる方が遺言の内容を決めるのに参考にしていただけるような視点で書いてみたいと思います。
まず、相続税が三代で無くなるという根拠は日本の相続税率が高いことにあります。
ただ、こういう事がよく言われていた頃よりも少し相続税率は下がっています。
そのため、高額の財産を残す資産家のような人には現在もあてはまるかもしれません。

ここでは大きく相続税対策をする立場と、相続税対策をしない立場の2つに分けて考えてみたいと思います。
相続税対策をする立場
減ってしまうにしても相続税対策をして少しでも多く財産を残そうとする立場です。
資産家と呼ばれるような人は財産の減り方が大きいので、相続税対策をしなければ現在だと四代前後で相続財産は少なくなると思います。
一般的なサラリーマン家庭では遺産分割の方法を工夫することにより、より多くの財産が残せると思います。
ここで、注意しなければならないのは、財産が減っていくという話はあくまで理論値だということです。
三代で無くなるが本当なら、今回初代となる人が億を超える財産を有しているなら、その三代前は十数億資産を保有していないと辻褄が合いません。今回初代となる人が財産を自分で築いたのなら、その人の三代後までに同じように財産を築く人がいるかもしれないのです。
ですから三代で無くなるという場合、このようなことは考慮に入れず、初代から税率を適用していくとどうなるかという理論値であるわけです。

相続税対策の方法の代表的なものとしては
・生前贈与を活用する方法
・相続税制に基づいて相続税が少なくなるような財産配分を考える方法
・控除枠を利用して投資する方法
などが考えられます。

相続させる財産が現金か、株か、不動産かなど財産の種類によっても方法が分かれます。
方法から決めるというよりも、具体的なケース毎に検討していくことが重要です。

相続税対策をする場合の注意点としては、あくまで現行の税制に基づく対策ですので、遺言書作成から相続発生までに期間が空く場合、その間に税制が変わったら、遺言内容を変更した方がよいということになります。

相続税対策をしない立場
無くなっていくのであれば時間やお金をかけて対策をしないという方や「子孫に美田を残さず」という考え方の方がとる立場です。
もうひとつご紹介できる考え方として、元々相続税は富の再分配機能を果たしています。
ある家庭に集まった財産を相続税を通じて国の予算として社会のために使っていくという機能です。
最近、自治体へ多額の寄付をされる方がいらっしゃいます。
ニュースでも聞いたことがあると思います。
あれほどの額の寄附でなくても、寄付者の名義にこだわらないのであれば、相続人に相続させ、相続税として納めることで社会に還元していくというのも一つの考え方だと思います。

ただ、住む家などの不動産を家族に残したいなどの要望がある場合、個別の相続税対策はした方がよいということになります。
相続税が払えず家を売らざるを得ないということになりかねないからです。
売ろうとしてもすぐに売れるとは限りません。

このように実際には、相続税対策をするしないというようにどちらかに分かれるのではなく、部分的に両方の考え方を取り入れて遺言の内容を決めるのが現実的だと思います。

相続税についての細かな情報については行政書士がお答えする立場にございませんので税務署や税理士にご相談ください。