前回、法律の解釈まで書きました。
法律の条文を解釈したあとは、何をすればよいのでしょうか。
次に行うのは、その条文に問題となっている事案があてはまるかどうかを確認する作業です。

ここで使うのが法的三段論法です。
規範:条文を大前提
事実:事実を小前提
結論:条文に事実を当てはめて結論を出します

規範というのはルールのようなものだと考えてください。

法的三段論法ではない論理学でいう三段論法で具体例を見てみましょう。
規範:人間は死ぬ
事実:ソクラテスは人間である
結論:ソクラテスは死ぬ

ソクラテスは人間であるため、人間は死ぬというルールにあてはまるわけです。
そうすると論理としてソクラテスは死ぬという結論が導き出されます。
これが三段論法です。

これまでは条文の解釈によって大前提となる規範の内容を明らかにしたのでした。
規範の内容が明らかになるとすぐに事実があてはまるかどうか判断がつく場合もあります。
しかし条文を解釈してもすぐに事実があてはまるかどうかわからない場合があります。
規範の抽象度が高い場合です。
例えば「過失」などの定義を明らかにしても、ある事実が過失なのかどうか直ぐにはわからない場合もあります。
この時、事実に評価を加え、より無理なく条文にあてはまる、あるいはあてはまらないという結論を導き出します。

論理学でいう三段論法には無い作業です。
自然科学を学んだ人の中には大前提と小前提があるのに事実に評価を加えたら何とでも言えてしまうではないか、と思う方もいらっしゃると思いますが、この辺をいかに無理なく行うかが法律家の職人芸なのです。
私もかつて大前提と小前提があるのなら結論はあてはまるかあてはまらないかであって、事実に評価など加えたら、運用している人間のさじ加減でどうにでもなるじゃないかと思ったことがあります。
実際運用の仕方次第では無理な法適用となりえます。
この辺をより多くの人に納得してもらえるように行わないと結論に対する支持が得られないということになります。

法律学が自然科学ではなく社会科学と言われる理由がわかっていただけたでしょうか。

まとめると法的三段論法の場合、単なる論理だけではなくて「法的」といわれるとおり
法律←解釈で内容を明らかにする
事実←評価で内容を明らかにする
法律と事実の両方の内容を明らかにしてあてはまるかどうかを確かめる事が必要になるです。