最高裁判所の大法廷で沖縄県の那覇市が孔子廟を有する社団法人に土地を無料で使用させていることが政教分離の原則に反するとして争われた裁判の判決がありました。

結論から言うと違憲という判断が出ました。

もともと第2審である福岡高等裁判所も違憲という判決を出していましたが、徴収する使用料は市に裁量があるとしたため第1審の当事者双方が上告していました。

第1審の原告側にとっては全額支払わせないのかという不満、被告側にとっては公益性を認めて免除しているので政教分離には反しないだろうという不満が残るからです。

最高裁では使用料についても全額を徴収すべきという判断をしました。

結果的には原告側が全面勝訴という形になりました。

日本での政教分離については政治と宗教の関わり合いを一切認めないのではなく、一定の関わり合いを認めています。

そのうえで、過度の関わりになっていないかということを目的効果基準に基づいて判断するというのが一般的です。

ただし、事案によっては目的効果基準を使っていない判決も出されているため学者による理論的な説明の仕方も判断が分かれている所です。

今回も目的効果基準によって判断したわけではないのではないかと思います。

この事案ではもともと訴訟の当事者ではない社団法人が那覇市の許可を得て孔子廟を設置する際に公益性があるということで那覇市から土地の使用料を免除されていたものでした。

しかし孔子廟において宗教的な儀式を年に1度行っていることや施設に非公開部分があることを含め団体の性質などを考慮すると、国民生活に溶け込んだ施設というよりは宗教的性格が強い施設だと認定されたため、使用料を免除することが地方自治体による宗教活動であると判断されたのだと思います。

使用料を払えば孔子廟自体は存続させることができるのでこのような判断が社団法人の宗教活動への制約になるとは言いにくいです。

月50万円近くなる使用料を払って施設を維持すべきなのかどうかはまた別の問題となります。