持続化給付金が給付され始めた当時、早く支給しなければ、潰れてしまうという意見も多かったため、簡易な審査での迅速な支給が要請されていました。
簡単な手続だと不正な申請が出てくることが予想されました。
やはり不正な申請が次々に明るみに出てきました。
組織的な給付金詐欺で逮捕者が出ています。
大学生なども巻き込み、億単位のお金を騙し取っています。
その中には国税局の職員もいます。
中には、よくわからないまま共犯に加わってしまった人もいると思います。
実際、逮捕者の1人は不正とは知らなかったと供述しているようです。
犯罪を犯した人にたまにいるのですが、犯罪が成立するのに違法かどうかの認識は関係ありません。(学説にもよりますが、実務ではこのように解されています。)
ここで改めて確認しておきます。
過失犯の場合を除いて、犯罪の成立には故意が必要とされます。
故意の内容は刑法に規定されている構成要件に該当する事実になります。
何罪に該当するかということや、自分の行為が犯罪に該当するかということは事実の評価にかかわることなので、認識している必要はないのです。
話が抽象的になっているので、もう少し具体的に傷害罪の場合で説明すると、故意の内容として、傷害罪に該当する傷害行為を行っているという認識までは必要ないのです。
法的に突き飛ばす行為が傷害の実行行為に該当するのであれば、犯罪を犯しているという認識がなくても、突き飛ばしているという認識があり、それによって結果的に相手が怪我をしてしまったら、傷害罪の故意犯が成立します。
故意犯には怪我をさせようと意図している場合を含みますが、このように法的に傷害の結果を生じさせる危険性のある行為についての認識があれば、故意が成立するのです。
更に詳しく説明すると、この「結果を生じさせる危険性がある」かどうかという部分の判断すら、行為者が正しく判断できている必要はないのです。
あくまで客観的(行為者の主観と関係なく)に結果を生じさせる危険がある行為であれば、「その行為」自体を行っているという認識だけでよいのです。
ダメ押しで説明すると、刑法上違法な行為であれば、違法であることを知らなくても、その行為を行えば、自分が何をしているかわからないまま行為を行うということは、責任能力が無い人でもない限りは無いわけですから、犯罪になってしまうということです。
長くなりましたが、以上をまとめると法的に結果を生じさせる危険があると考えられている行為であれば、行為者本人にその行為を行っている認識だけあれば、違法でないと思っていても、故意が成立するということになります。
「不正・違法だと思わなかった」に加え、少し刑法の知識がある人でも「わざと」ではないと言えば故意犯が成立しないと考える人もいるようですが、これも誤りです。
犯罪に当たる行為をどういうつもりで行ったかということは犯行動機には影響しても、故意の成立には影響しないのです。
判断がつかない場合は、怪しげなことはしないというぐらいでないと、意図せずに犯罪を行ってしまう危険があります。
今回の件に限らず、違法にならないギリギリの行為であれば、自由に行いたいというのであれば、勉強するしかありません。
決して法を悪用しろということではありません。
どこまでの認識が必要か
公開日 : / 更新日 :
「使い方次第」