神社にプーチン大統領の写真を貼ったワラ人形を釘で打ち付けたとして男が逮捕されました。

容疑は建造物侵入罪と器物損壊罪です。

ワラ人形は日本では呪術的な意味合いで用いられます。

では、このような呪術的な行為は犯罪になるのでしょうか。

これについては犯罪の実行行為とはなんなのかから考える必要があります。

刑法に定められた犯罪の実行行為の意味については諸説ありますが、現在有力なのは結果発生の現実的危険ある行為とされています。

ワラ人形を釘で打ち付けるという呪術的意味合いの強い行為については、仮に結果が発生しても、結果と行為の間に科学的因果関係がなく、行為自体には結果を発生させるだけの危険性がないため、刑法上の実行行為にはあたりません。

そのため、この男にプーチン大統領を殺す意図や傷つける意図があったとしても、殺人罪や傷害罪の実行行為にはならないのです。

もちろん暴行罪にもなりません。

このような行為は不能犯と呼ばれます。

呪術的な行為自体は犯罪にはならないのです。

では今回の行為が犯罪にならないかというと、まず神社に立ち入った行為について、神社は不特定多数人が出入りすることが認められていますが、犯罪行為で立ち入ることは管理者側が許諾していないと考えられます。

そのため公衆が出入りできる場所でも、管理権者の承諾がないと考えられるため、建造物侵入罪の構成要件に該当します。

次に、ワラ人形を釘で打ち付けた行為について、殺人罪や傷害罪、暴行罪にならないとしても、境内の御神木にワラ人形を釘で打ち付けているので、器物損壊罪の構成要件に該当します。

このように、今回の行為には建造物侵入罪と器物損壊罪が成立します。

ちなみに罪数関係は建造物侵入行為と器物損壊行為が、目的と手段の関係にあるため、牽連犯とされます。

牽連犯とされると、どのようなことになるかというと、重い罪の方で罰せられます。

牽連犯とされず、それぞれ独立した犯罪と考えられる場合は併合罪になりますので、併合罪とされるよりは刑が軽くなるということです。

軽くするためというよりは、わざわざ重くするほどのことでもないといった感じです。

このように犯罪は成立するけれども、刑罰が科される場合に、一罪として評価されるものを科刑上一罪といいます。