今日も民法の改正について書きます。

今回は債権者代位権についてです。

債権者代位権の制度は以前からあります。

債権は特定の債権者が特定の債務者に一定の債務の履行を請求できるものなので、債権者(債権者代位権の債務者)の権利を代わりに行使できるというのはかなり例外的な制度であるということができます。

その例外性の故に、解釈が必要になることも多かったと言えます。

まず、今回の改正では被保全債権の履行期に関する規定が見直されました。

代位行使する者の債権の履行期が到来していなければならないのは従来と同じです。

被保全債権の履行期が到来していないのに、被代位者の権利を代位行使できる例外が2つありました。

1つは保存行為にあたる場合で、もう1つは裁判上の代位です。

債権者代位権は裁判上でも裁判外でも行使できましたが、被保全債権の履行期が到来していない場合は、裁判上で代位する必要がありました。

そのための規定が非訟事件手続法にありました。

これとは別に、債務者の権利行使を一旦禁止する制度として民事保全法の仮差押があります。

考えてみれば、債権者代位権を行使する場面は、債権者が権利を実現するというよりも、最終的には強制執行がかけられるように、債務者の財産を保全することに意味があります。

そのため、裁判上で債権者代位権を行使する方法としては民事保全法の仮差押のルートが残され、非訟事件手続法の規定と裁判上の代位という制度は削除されることになりました。

次に、債務者の権利を代位行使する方法としては、金銭の支払いや動産の引き渡しを目的とする場合、債権者が第三債務者に直接自分に引き渡しを求めることができるとされていました。

ただし、先に書いたように債権者代位権は債務者の財産を保全するためのものなので、債権者が自分の債権に直接充当することはできないとされていました。

もっとも、この点については債権者の被保全債権と債務者が目的物を自己へ引き渡すよう求める債権を相殺することにより、事実上債権者が優先弁済を受けたのと同じ結果が実現されていました。

この部分について、法的にできること、できないことに改正後も変更はありません。

しかし、今回の改正で民法第423条の5が規定されたことにより、債務者は、債権者代位権が行使された後であっても、権利行使することができるようになり第三債務者も本来の自己の債権者(債権者代位権の債務者)に債務の履行をすることができるようになったのです。

これまでの制度と合わせて読むと、従来債権者が自己の債権に直接充当できないが、相殺することにより事実上優先弁済を受けられていたものが、今回の改正により第三債務者が自己の債権者(債権者代位権の債務者)に弁済できるようになるため、債権者が事実上優先弁済を受けられるかどうかがが怪しくなるということになります。

債権回収の手段が1つ減ったのに近くなりますが、本来の制度らしくなったということもできます。