原子力発電所の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場建設の候補地の選考が進められています。
最終処分場を建設するために、まず適当な場所であるか調査するため、文献調査というプロセスがあります。
喜んで受け入れる場所はないため、国は文献調査を受け入れた地域に交付金を支給することにしています。
候補の1つに上がっていたのが長崎県の対馬市です。
その対馬市の比田勝市長が、市議会の採択とは異なり、文献調査の受け入れを拒否することを発表しました。
地方では、人口が減少していることもあって税収が減っています。
財政が厳しい中、交付金という人参をぶら下げられたわけです。
最終処分場を受け入れるのではなく、文献調査の段階ですから、場合よっては文献調査だけ受け入れ交付金を受けるのではないかとも見られていました。
しかし対馬市は、文献調査受け入れの拒否を決めました。
財政難といっても、世界でも数少ない原爆の被爆地である長崎県に最終処分場を造る必要はないのではないのかということを以前このブログの記事でも書きました。
日本でも有数の観光名所でもあり、ジャパネットたかたのような地元企業もある長崎県で、交付金目当てに文献調査を受け入れなくてもよいのではないかとも思っていました。
対馬市議会では、請願を受け入れる採択がされていましたが、市長は市議会において
1市民の合意形成が不十分であること
2不評被害への懸念
3文献調査の結果が敵地である場合に、次のステップに進まないのは無責任ではないかということ
4住民の理解を求めるだけの準備ができていないこと
などを理由に、市議会の採択とは異なる判断に至ったことを表明しました。
人口減少が激しかったり、財政難であっても、他が受け入れない最終処分場を受け入れなければならない地域に暮らしているというのは、住民の自尊心にも大きく関わる問題だと思います。
経済的にも、風評被害で交付金の20億円では決してプラスにならないと判断したようです。
どこかに造らなければならない問題ですが、長崎県や対馬市の住民感情を考えると懸命な判断ではないかと思います。