山形地方裁判所で行われていた刑事裁判の公判手続で、手続きの一部がやり直されるという珍しい事態が生じました。
理由は、傍聴席の出入り口が施錠されたまま公判手続が行われていたからです。
憲法第81条は「裁判の公開」を定めています。
傍聴席の出入り口が施錠されていたということは傍聴人が入れないことを意味します。
つまり、非公開の状態で裁判が行われていたということになってしまうのです。
そのため、担当裁判官は一時的にでも違憲状態にあったと判断し、公判手続の一部をやり直したのです。
原因は、ある傍聴人が内側からカギをかけたことにあるということがわかりました。
その傍聴人とは、実は裁判官なのです。
事件を担当していない裁判官が、その裁判を傍聴していたのです。
裁判官は、裁判のために入廷する際、内側からカギをかけるのが普通になっています。
そのため、傍聴人として法廷に入った際に、無意識にカギをかけてしまったのです。
もちろん悪気はなく、ある意味職業病といえるかもしれません。
私も、もしコンビニで働いたことがあったら、自分が買い物をしていても、他のお客さんが店に入ってきた時に「いらっしゃいませ」と言いたくなるのではないかと思います。
身についた習慣というのは、そのくらい無意識に出てしまうものです。
結局、法定の外にいた裁判所の職員が、施錠されていることに気づいて、今回の事態が判明しました。
別の裁判所では、以前被告人に手錠をさせたまま、法廷で証言台に立たせて、手続きをやり直すという事態になったことがあります。
間違いに気づいたら、ちゃんとやり直すということが重要です。
手続きの内容は変わらないのですが、被告人の利益や裁判に対する信頼を守るためにも形式が重要になってくることもあるのです。