原子力発電所による発電について、東北大学大学院環境科学研究科の明日香寿川(あすかじゅせん)教授が、参議院経済産業委員会の参考人として、意見を述べました。

「米国では原発の建設費が高く、運転コストも再生可能エネルギーより高いというデータを政府や投資銀行が毎年発表している。国際エネルギー機関(IEA)は原発を再稼働して長期運転した場合の温室効果ガス削減コストが再エネ新設の6倍も高いと報告している。それでも日本では原発が安く、温暖化防止に役立つという言説がまかり通っている」というものです。

アメリカ(U.S.A)では電力の売買市場というものが存在しています。

そのため発電にかかるコストはシビアに計算され、損得が判断されるのです。

明日香教授は、原発懐疑派の方ですが、このように示されたエビデンスは客観的な調査に基づくものです。

以前から、原子力発電は低コストで発電できるので、産業界からの要望もあり、日本で推し進められてきた経緯があります。

しかし、安全性だけでなくコスト面で考えても、原発がローコストではないというのは世界の常識と言っても良い状況なのです。

同委員会での明日香教授の指摘は更に続きます。

「日本では再エネ導入を積極的に進めるような制度設計になっておらず、政府の導入目標も小さい。それゆえに、なかなかコストが下がらず、そのために導入量が小さく、競争原理が働かずにコストが高止まりしてしまう悪循環に陥っている」という指摘です。

つまり、国が再生可能エネルギーでは賄えないので原発を再稼働させると言っていますが、賄えない規模での導入しかしていないという側面があるのです。

賄えないから原発を利用すると言って、再生可能エネルギーによる発電を導入しなければ、スケールメリットが働かず、いつまで経っても、低コストにはならないのです。

コスト面だけでなく安全面ではさらに不安が残ります。

敦賀原発2号機の再稼働に向けた審査会合が開かれています。

原発の直下にある断層が、活断層である可能性が否定できません。

このような状況でも原発の再稼働を目指しています。

コスト面だけ考えても、安全性を考慮しても、決して原子力発電はコストパフォーマンスが高くないのです。

原子力発電所での発電にこだわらなくても、現在、核融合による発電設備の研究も進んでいます。

核分裂なら危険で、核融合なら絶対安全というものでもありませんが、より安全な発電方法ができても、危険な施設や廃棄物が残ってしまう現在の原子力発電を、積極的に活用する国のエネルギー政策には疑問を持たざるを得ません。